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メンテナンスQ&A

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ゆるめるか否かは、ゆるめる目的によります。まだ新しいギターの場合、棹の順ぞりを防ぐ目的でゆるめるのであれば、あまり意味がありません。ギターは、使用しているうちに弦の張力によって棹や表板が変化し、バランスがとれたところで安定します。このときすべてのギターが順ぞりするわけではなく、逆ぞりする場合もあります。その後は適切に保管されていれば、あまり大きな変化を起こすことはありません。 本来の性能に早く到達するには早く安定させ、その状態で弦高等を調整した方がよいと思います。ギターを弾き込んで最高の状態にしたいと思っているときは、ゆるめる必要はなく、どんどん弾いてやった方がギターのために良いと思います。人によっては、表板の緊張が急激に変化することを避けるために、弦の交換を1本ずつ行ったり、弾かないときも常にチューニングしておき、いつも同じ音程(張力)となるように気をつけている人もいます。  数十年を経た古い楽器の場合は、当然安定した状態となっていますが、使用にあたって寿命を考慮する必要が生じます。あるギターの寿命がどの位かは誰にもわかりません。結局、弾かれる方が最高の状態に保つことを優先するならゆるめず、寿命を延ばすことを優先するならゆるめる、という使い方をすることになります。 長年弾き込んだギターで、弦をゆるめてギターを休ませると,以前の音が回復することもあります。このときは、ゆるめたまま、数ヶ月そのままにしておきます。また、弦の寿命を延ばすためにゆるめる場合は、目一杯ゆるめたらよいでしょう。

(製作家 尾野 薫)

張りの強い弦と弱い弦では6本合計の張力で5kg位の差があります。この5kgの差で駒が飛んだり力木が剥がれると言う事は考えにくく、故障は張力が原因のトラブルではなく、木工の精度の問題だと思います。ですからこの質問の答えとしては、たとえ古い楽器でも健康状態が良い楽器ならば、心配する必要はないということになります。また、楽器の寿命との相関関係については、一般的な答えを見出すのは難しいと言えます。なぜならどの時点が楽器の寿命かという事に関しては、人によって考え方が様々ですし、楽器自身にも体力の差があるからです。概して見た目にもいかにも弱々しそうで、表面板の変形の大きい楽器は、張りの弱い弦でピッチを下げて弾いた方が良いといえますが、それ以外はむしろ音色の好みによって弦を選ぶ方が良いと思います。

(製作家 尾野 薫)

0フレットにある骨棒をナット、駒(ブリッチ)についている骨棒をサドルと言います。ナットやサドルは音の入り口でその形、高さ、材質、精度などは音色に関係しています。また雑音の原因となる場合が多くあります。ナットから出る雑音は弦の通る溝の形が悪い場合が考えられ、弦を外して溝についたよごれを参考にして調整します。サドルもあまりとがらすと巻き弦がわれて雑音が出ます。弦高調整をすると音色やテンションも変化していきます。サドルを高くする場合は作り直すかスペーサーを敷きますが材質は硬いほうが音色の変化が少なくて済みます。ナットも同様ですが開放弦の音色の硬さをとるため柔らかい材質のスペーサーを使う事もあります。多少器用な人なら自分で調整出来ますが、心配な時にはオリジナルはさわらず、新しく作り直すといいでしょう。(素材はアウラで扱っています)

(製作家 尾野 薫)

ギターにとっては弦を張って張力をかけた状態が普通であって、弦の新旧による張力の差は僅かですから新しい弦に交換しても結果は同じです。ただ、一般的に言えることは長い間弾かずに調弦した状態でケースに保管することは避けたほうが無難です。ケース内にしまったままにすると湿度や温度の好ましくない状態が長時間に渡って続くことがあり、ギターに無理がかかることがあります。  さて、弦を長い間使用していると張りが強く感じるのは、弦が伸びなくなってくるためです。新しい弦は調弦したそばから音程が下がってきますが、それは弦が伸びているからです。伸びるということは、言いかえれば、弦には縮もうとする力があるということで、そのエネルギーは弦の振動を助けます。また、弦のしなやかさは高次倍音の小さな波を形作りやすく、反対に伸びきってしまった弦は倍音が少なくなって来ます。この変化は低音弦の方が顕著で、もともと倍音の少ない高音弦ではそれ程目立ちません。むしろ高音弦ではフレットにあたって弦がつぶれる事による音程の狂いや不良振動の方が先に問題になります。いずれにせよ音色の変化を聞き、気に入らなくなった時が変え時だと思います。

(製作家 尾野 薫)

練習量によって一概には言えませんが、張り替えてから1週間程度で低音弦に劣化が現れます。低音弦の場合、交換したばかりで弦がどんどん伸びている間は、金属的な歯切れの良い音がしますが、伸びが安定すると共に、次第に華やかさが失われていきます。その分、落ち着いた音質になる場合もあります。その後、弾き続けていると次第に音の伸びがなくなり、音量が落ちてきて、最後は太鼓を叩いているような、味気ない音になってしまいます。また、フレットに当たる部分がつぶれてくると振動にムラが生じ、音程が悪くなります。これは高音弦についても言えることです。高音弦は低音弦ほど音質に変化を生じませんが、やはり伸びきると次第に音程が悪くなり、音質も暗くなって音の伸びが失われます。(もっとも、高音弦で音程の良いものにあたるのはなかなか難しく、張り替えた時すでに問題のある場合もしばしば見られます。ばらつきの程度はメーカーや、ロットによって異なります。しかし、音程だけに気を取られないで、気に入った音質を求めて高音弦を色々と張り替えてみるのも、なかなか楽しいものです。「弦はどれを選んだらよいか」を参考にしてみて下さい。)  プロの中には弦を数日で張り替える人もいますが、経済性も考えると、1ヶ月位で張り替えるのが現実的なところではないでしょうか。必ずしも6本まとめて張り替える必要はなく、低音弦3本だけを頻繁に交換される方も多いようです。

膠の接着強度だけを見ると日常生活の温度や湿度では劣化は殆ど発生しないと言えます。例えば湿度のみを取り出せば90パーセントを越えると溶け始めますが、現実的には接着層がその湿度を越える事はかなり劣悪な環境下に長期間置かなければ起きえません。従って特別過酷な状態でも無いのに駒が飛ぶ様な場合は何らかの事情で接着不良があったか、長期間に渡っての木材の伸縮の影響で外れたと考えられます。前者の場合は膠を煮込む時に温度が60℃を越え加水分解したり、雑菌が混入して劣化が生じた事によって起こり、後者は駒材と表板の収縮度の差から部分的な浮きが生じ、時間と共に広がる事によって起きます。また、後者の木材の動きによる原因で起こる故障は駒だけで無く、力木剥がれもあります。これは力木は長さ方向に伸縮しないのに対し表板や裏板は幅方向に伸縮が起こる為に発生すると考えられます。何れにせよ、膠は楽器自体が湿気の影響で伸び縮みした際に一緒に多少伸縮する可能性を考えると、比較的楽器に無理な負担がかからない接着剤と言えます。湿度管理は50から60パーセントの範囲内にしておく事が望ましいと言えます。

(製作家 尾野 薫)

弊店で取り扱っているゴルペ板には、何れも接着剤が付いています。ゴルペ板を貼るときは、内側から空気を押し出すように慎重に貼りますと綺麗に貼れます。表面板が歪んでいる場合は、駒等にぴったりくっつけて貼りますとその部分が剥がれてくることがありますので注意が必要です。アウラで修理を担当しているギター製作家は、高級品では接着剤に膠(にかわ)を使用したりします。ご自身で貼るのが不安な場合はご用命下さい。

0フレットにある骨棒をナット、駒(ブリッジ)についている骨棒をサドルといいます。通常ナットやサドルは取り外しできる為、自作して交換することも可能です。しかしナットやサドルは弦の振動の起点であり、その形、高さ、材質、精度などは少なからず音色に関係します。また雑音の原因となる場合が多く有ります。そのため作製には細心の注意が必要です。またサドルは交換時に表板を傷つける危険があります。そういったことを考えると専門店でプロの方に作製してもらうことをお薦めしますが、承知の上でオリジナルには触らず自作にチャレンジするのも良いかもしれません。

ナット、サドル作製にあたって、まずはきちんとギター本体に取り付けることから始めます。ナット、サドルスペースは、一見均一に見えても正確に計ると1弦側、6弦側で多少の誤差があるはずです。広いほうを基準に合わせていきます。その時ナット、サドルを挟み込む両面、底面の3面が全て接するようにしなければなりません。加工の際には、適当な大きさの合板にシール付のペーパーを貼るか、または両面テープでペーパーを固定し、その上で面を出しながら作業すると良いでしょう。ぴったりと合ったら、ナットから正確に弦幅と高さを決め、その後サドルの高さを決めます。ナットの弦幅は極細丸の精密ヤスリで加工します。ナットやサドルの形、高さは板に貼ったペーパーで面を出しながら決めます。

先ほども述べましたが、ナットやサドルの形、高さも音色に関係していますし、雑音の原因にもなるので、まずはオリジナルをよく観察しながら同じ様に加工してみて下さい。

以前の糸巻のネジ穴は、爪楊枝を使って埋めると良いと思います。爪楊枝の先端を切りながら、ネジ穴の大きさ、深さに爪楊枝を合わせます。合わせた時に、すぐ爪楊枝を切らずに印だけ付けておき、印の部分に一周少しだけ切込みを入れます。ネジ穴に少しボンドを入れ、爪楊枝を長い状態で差し込んで接着し、先端だけ残して折ります。あとは少し突き出た部分を丁寧に平らにすればよいでしょう。新しい糸巻を木ネジで取り付けるときは、必ずキリのようなもので道穴を開けておきます。その際、ネジよりも大きくなったり、突き抜けてしまったりしないように注意が必要です。

ただ張り替えるだけでは音は出ても、楽器として使える状態にはならないと思います。高音弦と低音弦では弦の太さが違うことから、弦をフレット打ち(ビリつき)させないために、高音側と低音側では1ミリほどフレットからの弦の高さが違います。その弦高の差を弦の両端にあるナット(0フレット側)とサドル(駒側)の高さで調節してあります。つまりその楽器のもとの弦高にもよりますが、高音弦と低音弦を反対に張ってしまうと、高音側と低音側で高さが逆になってしまいます。そのためとても弾きにくく、フレット打ちしてビリつきやすくなります。ですから最低でもナットとサドルを左用に作り変える必要があります。厳密に言えば、ギターはほとんど対称に見えますが、あらゆるところで高音側と低音側で微妙に製作を変えてあります。それは先ほど述べた弦の太さの違いにもとづく数値的なものから、低音が低音として、高音が高音として振動し易くするための音響的なものまで、さまざまです。もちろん製作家はギターを正面から見て左側に低音弦、右側に高音弦を張るつもりで、表板の内部構造や指板や駒(ブリッジ)を製作しています。左利きの方が本当に弾きやすく、良い音の出る楽器を求めるならば、信頼できる製作家に左用ということで作ってもらうことをお奨めします。

(製作家 田邊雅啓)

現在、ゴルペ板もさまざまな種類のものが市販されています。中でも片面がシールで、すでにゴルペ板の形になっていて、あとは張るだけというタイプもあります。そういったタイプのものなら出来ると思います。

注意点としては、シール部に触ると指紋が残りますし、シールだけですと完全に密着しないので気泡が入り易くなります。そしてズレても貼り直しが出来ません。ポリウレタンなど塗膜がとても硬く厚い楽器ならゴルペを一枚あきらめれば貼り直せますが、セラックなど塗膜の薄い塗装ですと、貼り直そうとすると表板の塗膜ごと剥がれてしまいます。コツとしては、シールを一度にはがさず、はがしてない部分で駒のラインなどを目印に場所を確認しながら、片側から徐々に貼ると良いと思います。

(製作家 田邊雅啓)

セラックの塗装方法にはハケ、スプレー、タンポの3種類があります。タンポとは、かなきん(木綿布)で綿を包みテルテル坊主のような形にしたものです。そのタンポにアルコールで溶かしたセラックを染み込ませギターに直接すり込みます。タンポは止めずに一筆書きのように動かします。止めたり、同じ所をこすりすぎると下の塗膜を剥がしてしまいます。(尾野薫の「ギターのはなし」より)

セラック塗装のほとんどはタンポで仕上げられます。駒の周辺を塗る場合、タンポのテルテル坊主に角を作り、なるべく駒の際までタンポが入るように塗ります。それでも駒が邪魔をしてタンポを均一に動かし難くムラが起こりやすくなります。

綺麗かどうかという点ではムラはないほうがいいと思いますが、ある程度のムラはセラックタンポ塗りの宿命です。むしろ若干のムラならば、熟練した技術で手間と時間をかけて塗りこんだセラック塗装の証ともいえるかもしれません。

ギターは使用しているうちに、弦の張力によって表面板や棹が変化して、バランスのとれたところで安定します。新品のギターは安定するのに1年位はかかります。その間にうねりが出てくることもあります。しかし表面板のうねりの具合は製作された表面板の強度によって変わってきます。製作家は求める音のイメージから表面板の強度関係を決めていきます。製作家がサントス・エルナンデスなどのスペイン的な音色のイメージを持っていたら多少、うねることを承知で表面板が製作されます。一方でローベル・ブーシェなどの音のイメージを持っていたら、製作された表面板はあまりうねりません。

表面板がひどく変形したり故障を起こしたとすれば、張力や経年変化よりも、木工の精度や楽器の保管状況に問題があると推定されます。目立った変形がある場合は、一度専門店で確認してみてください。

(製作家 尾野 薫・田邊 雅啓)

フラメンコギターは、立ち上がりや歯切れの良いリズムの分離の良さなど、フラメンコ的な音色が求められるため、弦高をクラシックギターよりも低く設定します。そのため両用フラメンコとして使いたいクラシックギターの弦高によっては調整が必要になります。また、フラメンコギターには、カンテ(歌)やバイレ(踊り)の伴奏のほかギター独奏があり、独奏では切れのよさだけでなく音の深みやサスティーンが求められるため、伴奏よりも弦高が高くなります。しかし最終的にはクラシックと同様、弾き手のタッチの強さや求める音色、また使用する楽器の弦の張りなどにより、適正弦高は変わります。そして弦もフラメンコ用などさまざまな種類がありますので、いろいろ試してみるといいでしょう。

次に、音質の変化に関して、ゴルペ板を貼ることでおそらく変化すると思います。その変わり方は楽器によってさまざまです。ゴルペを貼る楽器の表板の構造から、ゴルペ板の厚みや大きさ、貼り方などいろいろな要素が絡んでいます。このため貼ってみないとわからないところがあります。

(製作家 田邊 雅啓)

音程の悪さについてはいろいろな原因が考えられます。12フレットの音がハーモニクスの音より高い場合、考えられる原因の1つめは弦の不良です。新品でも精度が悪く、音程の悪い弦もあります。これはほかの弦に数回交換するとわかります。2つめは弦の押さえ方です。ハイポジションにいけばいくほど弦高は高くなるので、押さえづらくなります。そのときどうしても引張り気味になるため、音程が上がりやすくなります。3つめは弦高です。経年変化等で棹や表板が変化し、弦高が高くなっていると、普通に押さえても弦を押さえたときの張力が増して音程が上がりやすくなります。4つめは補助弦長です。0フレットから12フレットまでの距離の2倍の位置にサドルを置くと、弦を押さえたときの張力や弦の太さなどが要因となり音程が上がってしまいます。そのため理論弦長より1~2ミリの補助弦長が必要になります。この補助弦長が足りないことが原因の場合があります。3か4に問題がある場合、修理が必要になります。音程の高さの程度にもよりますが、サドルの高さに余裕があれば弦高を下げます。または、2ミリくらいのサドルの幅の中で、サドルの頂点を後ろにずらすことで補助弦長が確保できれば、サドルの調整で済みます。サドルで調整できないものは既存のサドルの溝に埋め木をして、新たに溝を切り直すかナットを特殊加工したり、指板を少し短くしたりして、0フレットの位置をずらし、0フレットから12フレットの距離を短くすることのいずれかで補助弦長を確保する方法があります。しかしこれらの修理はもとの駒(ブリッジ)の形やフレッチングに関わってくるので過度な調整はできません。

(製作家 田邊 雅啓)

セラック塗料はギターの音質にとってきわめて相性が良く、銘器と言われる多くのギターがセラック塗装によるものです。しかし耐水性、耐熱性が低いので扱いが悪いと白濁したり、光沢が失われたりします。また傷も付き易く非常にデリケートな塗料といえます。日頃の手入れは、セーム革などで乾拭きする程度で十分です。ワックスやオイル等はあまりお薦めできません。セラック塗装の利点は、タンポ塗りでとても薄い塗膜がつけられることと、タッチアップ(上塗り)し易いところです。ワックスは木目の中に入ったり、研磨剤が入っているものでは磨き過ぎると塗膜を剥がしたりします。オイルもシリコン等が入っているものは、常用すると塗膜の表面がコーティングされ、アルコールを溶剤とするセラックのタッチアップが難しくなります。もし汚れ等がひどく乾拭きでは足りない場合は、専門店でセラック塗装の楽器に使えるものを確認して購入すると良いと思います。セラック塗装の楽器は手入れももちろんですが、汗が付かないよう長袖を着たり、当て布をしたり、こまめに乾拭きしたりすることで、塗膜への負担は軽減します。おおよそ人間が不快と感じる環境は楽器にとっても好ましくありません。梅雨時期の湿気、冬季の乾燥などの湿度管理や、直射日光に当てたり、車のトランクルームに放置したりするなど温度管理など注意しないといけません。

(製作家 田邊 雅啓)

ネック(指板面)が凹形に曲がった状態を「順反り」、凸形に曲がった状態を「逆反り」と呼んでいます。ネックの反り具合はヘッド側または駒側から、指板両端の角の部分を通して見て確認できます。順反りになると指板全体の弦高が高くなって弾きづらくなり、逆反りになると特にローポジションでフレット打ち(弦の共振による雑音)が目立つようになります。多少順反りしているほうが良いと言われる理由は、弦が楕円状に振動するので、ネックが完全に平面であるとフレット打ちしやすくなるためです。左手が弾きづらいと感じないわずかな順反りが適正と言えると思います。また弦高については、12フレットの頂点から弦の下までを測定した時、1弦で3ミリ、6弦で4ミリが標準とされています。適正な弦高は弾き手のタッチや楽器によって変わります。右手のアポヤンド等、強いタッチをしてもフレット打ちしない弦高で、左手の弾きやすさのためになるべく低い弦高が適正です。ただし、タッチの強さや角度によって弦のビリつき加減はずいぶん変わるので、左手の弾きやすさと右手のタッチとの兼ね合いを見ながら、自分にとっての適正弦高を見つけてください。

(製作家 田邊 雅啓)

和音を弾くときは、セーハをはじめ左手の押さえる指の形が複雑になります。そのため弦の押さえが甘くなったり、隣の弦に指が触れたりしてビリつき等の雑音が出ることがあります。その場合は弦高や弦幅を自分に合ったものに調整して、後は練習するしかありません。問題はきちんと押さえているのにビリつきが出る場合です。押さえたフレットからナット(0フレット)の間でビリつく時と、サドル(駒)の間でビリつく時があります。単音で弾いたときに問題がないならば、弦の共振が原因の場合があります。和音を押さえて弾いた音の中に、ユニゾンやオクターヴ、または倍音の関係に近い振動数を持つ音が、押さえたフレットからナット間、サドル間に存在すると、共振して単音ではビリつかないのに和音ではビリついたり、弾いていない弦がビリついたりすることがあります。しかし、共振によって起こるとはいっても、弦がフレットに触って起こるビリつきなので、根本的な原因として、ナットかサドルが低過ぎたり、フレットが浮いていたり凹んでいたり、指板が反っていたりすることも考えられます。多くの場合はナットかサドルを高くすれば直りますが、弦高も高くなるので、弾き易さとの兼ね合いになります。いずれにしても、ビリつき具合から原因まで、とても微妙なところなので、一度専門店で確認すると良いと思います。

(製作家 田邊 雅啓)

もちろんオーダーメイドならば、最初から20フレットを装備して製作できますし、大きさ、形も、好みに合わせられます。しかし、20フレットを既存の指板に後付けすることは、ほとんどのギターで可能です。19フレットがサウンドホールにかからず、一本につながっているギターでは、20フレットの位置まで黒檀の余裕があれば、そのまま打ち込んだり、見た目のバランスから、フレットの代わりに、爪楊枝ほどの黒檀を簡易に載せたりすることも出来ます。多くのギターによくあるように、19フレットがサウンドホールで切れていて、20フレットを確保できないときは、19フレットの脇から20フレット分の指板を増設します。このとき19フレットの長さやサウンドホールからの指板のえぐり具合などで、ある程度増設できる20フレットの大きさや形が決まります。

このように後付けする方法は、指板の形状によっても微妙に異なるので、20フレットを取り付けたいギターを実際に持っていって相談すると良いでしょう。

(製作家 田邊 雅啓)

補修をしないと、時間が経つにつれて傷から湿気や汚れが入り、傷と共に繊維方向に黒ずみが広がってきます。傷や黒ずみが気になるようでしたら補修をした方が良いでしょう。弦トビや弾き傷など様々なギターの傷の補修をする場合、ギターの塗装に合わせて同系統の塗料を盛って補修します。傷の具合、深さにもよりますが、木部まで傷が及んでいる場合は傷跡が残ってしまいます。また、ポリウレタン等の合成塗料は溶剤によって溶けにくいため、打ち傷等による傷が白化したものはとれません。そういった合成塗料の傷をきれいにするためには塗り替えになってしまいます。セラック塗装の楽器は、タッチアップを加えて部分補修ができるため、木部まで及んでいない傷はほとんどわからなくなります。

(製作家 田邊 雅啓)

表面板の中心は、ちょうど高音側の表板と低音側の表板との接合部で、乾燥等が原因となって開く場合が見受けられます。しかし、この部分は表面板の内側の接合部分に木が入っているか、あて木がしてあるので、ひどく開く場合は少ないと言えます。少し様子を見て開きが大きくなるようだったり、開いている部分が浮いているようなら、表面板の裏の力木やあて木が剥がれている可能性がありますので、一度専門家に見せた方が良いでしょう。音色に関しては力木やあて木が剥がれていない限り大きな影響は無いと思います。

(製作家 田邊 雅啓)

ネック反りを起こす原因は、材料の性質から木工の精度や使用者の保管状態まで、さまざまなことが考えられます。そして材料も、製作家も、使用者の環境も、それぞれ異なるため、一概に原因を特定することは困難です。しかし、本体も含め、反っている状況を確認すると、おおよその原因はわかります。そうした原因を踏まえて削りなおし、調整したのであれば、弱くなったと考えなくてよいと思います。ただ、きちんとした調整がなされていても、湿度が高い状態で、弦を張りっぱなしにして弾かずに放置すれば、再び反ってくる可能性はあります。

(製作家 田邊 雅啓)

フレットの高さは通常1ミリです。製作家によってはもっと高いフレットや、幅の広いフレットも使われます。フレットを打ち直した時の音への影響は、現在のフレットがゆるかったり、フレットの面が平べったかったりしているならば、きちんと打ち直せば音は良い方向に改善されると思います。きちんと入っていて、フレットの曲面がきれいに出ていれば、交換による大きな影響は無いと思います。

(製作家 田邊 雅啓)

①フレットを抜き、指板を削り、まっすぐにしてからフレットを入れ直す。
アイロンは一時的に直っても、また元に戻ってしまうのでだめ。

②アイロンで直す。指板を削るのは最悪。音が変わってしまう。

③フレットを抜き、新たに入れ直す。フレットの打ち方や、足の形状によりネックの反りを修正する。

④ネックがまっすぐなのは弊害が多い。若干順反りの状態が正しい。

ネックの曲がりの程度や楽器の価格帯を考慮すると回答するのが難しいところですが、順ソリの原因にはいろいろな要因があり、ソリの程度と原因により修理内容は変わります。

①の方法は他の方法で対処出来ない場合に用います。実際の安定性も考慮に入れると無難な方法で、確実な修理という意味で、この方法が一番良く、ほとんどの原因が解消出来ます。確かに音が変わる可能性が有りますが、再塗装や上塗り等による変化に比べてれば、必ずしも大きな変化とは言えません。

②の方法は一番簡易で良いと思います。ただし、フレットの緩さやネックそのものの強度によっては、再度反ることもあるでしょう。

③の方法ですが、確かにフレットの入れ具合でも微妙に調節出来ますが、ひどい順ソリかフレットが原因のソリでなかった場合には、回復は難しいと思います。

④に関してはその通りだと思います。ただ僅かに順ソリの場合です。

総じて言えば、個々の楽器の状態とオーナーの考え方によって、選択肢の中からどれを取るか変わって来ます。

(製作家 田邊 雅啓)

弦高を下げる際、どの程度下げるかに応じてサドルを削ります。例えば12フレットで0.5ミリ弦高を下げたい時は、ブリッジのサドルを1.0ミリ低くする事になります。それに応じてサドルがブリッジに潜ってしまう場合、ブリッジ自体(木部)も削る必要があります。これは、少しならば何の問題も有りません。しかしながら、サドルを低くする事でブリッジ穴から出ている弦の角度が小さくなると、音色や張りが変化することがあります。既にブリッジの弦穴からサドルに向けての角度が小さい場合は、ブリッジの木部自体を削ってサドルを露出し、更にサドルを削ると、かなり角度が浅くなる可能性があります。この場合、程度によっては他の修理方法を考える必要があります。

(製作家 田邊 雅啓薫)

半丸の形のものも、半丸の中心から半分に切り取りますと片屋根の様な形となります。つまり弦の接点部分だけを取り出して考えてみれば、両者とも同じように片屋根の形に当たっています。したがって接点部分で言うならば、きちんと調整されている限り、接点の微妙な面積の違いだけなので、さほどの変化は無いと思います。

むしろ半丸か片屋根かどうかよりも、弦の接点が尖り過ぎていたり、反対に面がだれていると、巻弦が割れ易かったり、雑音を発生したりします。そして同じギターで半丸のものと片屋根のものとで、サドルを入れ替えた場合、半丸の方が頂点が後ろになる(弦長が長くなる)ので、補助弦長が増え、音程が下がる方向に変化します。

ハイポジションなどで音が上ずり気味の楽器は、片屋根から半丸へにすることで頂点を後ろにずらし、音程を調節することがあります。また、ハイポジションで音が下がる場合は逆の設定をすることになります。

(製作家 田邊 雅啓)

あくまでも経験に基づく感想ですが、牛骨の方が多少固めなものが多いようです。それに応じて音色も象牙に比べ多少硬めになると言えます。しかし工業製品とは異なり、物によって硬さにバラツキがありますので、牛骨の中には柔らかくもろいものも見受けられます。それに比べ象牙は質が安定していて、見た目にも高級感がありますので安心して使用出来ます。

また、ナットとサドルは音の入口とも言える部分ですから、音色や雑音に大きく関わっています。中でもその形状で音色は大きく変わります。弦を“へ”の字に曲げる角度や弦との当たり具合、楽器との密着具合などが大切な要素となりますので、材料の選定だけでなく、楽器に合った作成や調整が大切だと言えます。

(製作家 尾野 薫)


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