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髙木真介の新スペイン便り
13.インターナショナル民族フェアー、高木真介の新CDとスペイン在住30周年記念日本演奏ツアー(2012.5.24)

皆様こんにちは。すっかりご無沙汰していますが、いかがお過ごしでしょうか?
マドリードも初夏の心地よい気候のこの頃です。久しぶりのスペイン便りですが、どうか最後までお付き合いください。

第18回インターナショナル民族フェアー(フエンヒローラ、コスタ・デル・ソル)

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4月28日から5月1日の4日間、スペインは南、美しいコスタ・デル・ソルにあるフエンヒローラという町で開催された“FERIA INTERNACIONAL DE LOS PUEBLOS”(インターナショナル民族フェアー)に関してお伝えします。今年で18回目を数えるこのフェアーに関して、今まで私は全く知りませんでしたが、今回招待されたので行ってきました。フエンヒローラの町はずれにある催物会場が使われ、さまざまな国が集まり、それぞれの文化や習慣、食べ物などを紹介するフェアーです。

今年は30か国ほど(内、スペイン国内のいくつかの地方自治体も含まれる)の参加があり、各国一つずつカセータ(館)を持ち、そこを拠点にそれぞれのお国自慢を紹介するという形でした。催物会場には、各国のカセータ以外、移動遊園地なども設置され、かなり大規模なお祭りという雰囲気でした。各国のカセータが並ぶメイン通りには、大勢の人でごった返していました。会場に着いてまず気付いたことは、当然ですが、様々な人種が集まっているということ、いろいろな食べ物のにおいが混じりあって充満しているということ、各カセータから流れてくるいろいろな音楽、などでした。参加者のそれぞれが民族衣装を身にまとっていたり、各カセータの軒先では屋台のように食べ物を作って売っていたりしました。
200メートルほどのメイン通りを歩くだけで、30もの国の異なる食べ物を味わうことができるのです。アルゼンチン館では豪快な肉やソーセージ類のロースト、インド館ではカレーやスパイスの効いたソモーサなど、メキシコ館ではタコス、ベネズエラ館ではトロピカル・フルーツ、アメリカ館では大きなハンバーガー、日本館では焼きそば、うーん、きりがありませんね。当然様々な飲み物も売っています。ブラジル館のカイピリーニャは、最高にうまかった。それから記憶があいまいなのですが、多分メキシコ館の軒先で売っていたサトウキビのジュースも珍しかったです。サトウキビをそのままローラーにかけてジュースを搾り取っていました。これにラム酒を入れて飲むのですが、かなり効きます。それから、ビールが好きな私は、ドイツ・ビールを始め、様々な銘柄のビールが楽しめるのも素晴らしいと思いました。ただし、あとで説明しますが、残念ながら思い切り飲んだくれていることはできませんでしたが・・・。そして、各館の中ではステージが設けられ、いろいろなイベントが行われていて、ライブハウスのようにテーブルやいすも並べてあるので、飲食しながら楽しめます。それぞれ工夫を凝らした飾り付け、展示物、写真、小物の販売などがあり、簡単にはすべてを見て回りきれるものではありません。また、時折メイン通りには様々なパレードが繰り出します。アイルランドのケルト音楽をやっているグループが通り過ぎたかと思うと、突然ボリビアのインディヘナのダンスグループが現れたりして、自分がどこにいるのか一瞬わからなくなります。色とりどりの民族衣装を見るだけでも大変興味深いものがあります。

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 さて、私はこのフェアーには、日本館でギターを弾くべくここに来たのでした。だから飲んだくれてはいられなかったのです。本来なら筝などの和楽器の演奏があるべきなのでしょうが、日本人ということで、ギターでもいいから演奏してください、という事で招待されました。インターナショナル・フェアーなので、スペイン音楽、南米音楽、ヨーロッパの民族色の濃い音楽などとともに、半分くらいポピュラー音楽もごちゃ混ぜにしたレパートリーを持っていきました。曲によっては自前のプレイバック付きで演奏しました。もちろん日本の音楽も演奏しました。コスタ・デル・ソル在住の日本人フルーティストKさんが共演してくれて、坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」や宮城道雄の「春の海」などを演奏しました。そして「上を向いて歩こう」をその場に居合わせた日本人の方々と合唱しました。やはりコスタ・デル・ソル在住のRさんという日本女性も、浴衣姿でステージに上がって一緒に歌ってくれました。彼女は日本でプロのHIP HOPシンガーとして活躍していたそうです。おかげで、ステージがとても華やかなものになりました。「上を向いて歩こう」は海外でよく知られる日本の歌、お客さんも一緒に歌ってくれました。日本人館では、他に合気道のデモンストレーション、コスプレショー、日本語会話講座、書道サービス、手相占いなどのアトラクションがありました。

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 残念ながら私は都合で4日間丸々いることはできず、前半の2日間だけの参加でした。各日2ステージ、合計4ステージ演奏してきました。地元テレビ局の公開スタジオも設置されてあり、順番に各国の音楽や舞踏などを生中継で紹介していました。私もフルートのKさんと一緒に出演して「戦場のメリークリスマス」を演奏しました。司会者が坂本龍一ファンだったようで、とても喜んでいました。

演奏の合間に、このフェアーをいろいろ見て回ることもできたので、とても楽しい2日間でした。個人的には、ギリシャ館での民謡演奏、ブラジル館で素晴らしいサンバを踊っていた女の子とカイピリーニャ、エジプト館のベリーダンスなどがとっても気に入りました。しかし何よりも、音楽、踊り、民族衣装、いろいろなデモンストレーションや飲食物などを通してさまざまな国の文化や習慣、そしてそれらの国々の人たちに気軽に接することができることは、本当に素晴らしいことだと思いました。そしてまさにこれこそ、世界平和のための相互理解にはうってつけなのでは、とも思いました。

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 このフェアーはコスタ・デル・ソルで毎年この時期に開催されています。日本のゴールデンウィークとも重なるので、来年スペインを訪れる計画がある方は、ぜひこのフェアーもプランに入れられることをお勧めします。

高木真介の新CD発売とスペイン在住30周年記念日本演奏ツアー

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私の新CD “SERENATA ESPAÑOLA” masayuki takagi spanish guitar recital が6月にスペインのVERSOというレーベルから発売されます。御覧のようにスパニッシュ・ギター音楽の名曲アルバムですが、中にはあまり知られていない曲も入っております。たとえば、エドゥアルド・モラーレス=カソの「リンダラハの庭」は、私のお気に入りで、ギターのための重要なレパートリーになりうる名曲だと思います。モラーレス=カソは、現在スペインで活発に作曲活動をしていて、ギターには格別の愛着を持ちこの楽器のために数多くの作品を書いています。私の良き友人でもあります。
また、このCDにはスペイン人ギター製作家を代表する3人の名工(ホセ・ルイス・ロマニリョス、アルカンヘル・フェルナンデス、アントニオ・マリン)による3台の極上ギターの音色が収録されていて、いわば「スパニッシュ・ギターの名器による美音博物館」のように仕上がっています。そしてブックレットには、イントロダクションをギター製作家ホセ・ルイス・ロマニリョスが、随筆風の解説を音楽学者ハビエル・スアレス=パハーレスがそれぞれ寄稿してくれました。スアーレス=パハーレスは、マドリード・コンプルテンセ大学音楽学科教授であり、ビウエラやギター音楽およびスペイン音楽に関する数多くの著作品があります。このブックレットにはスペイン語、英語、日本語のテキストが掲載されますが、今回のスペイン便りに、この日本語のテキストを付録として掲載します。このCD、日本では7月に発売予定です。もちろんアウラでも販売されます。予約はお早めに(笑)。

VERSOは、古楽から現代までのスペイン音楽やスペイン演奏家を主体に精力的にCDを出版しているレーベルです。ホームページでその膨大なカタログを見ることができます。 >>www.verso.es

もう一つ私事で恐縮ですが、今年2012年夏に私はスペイン在住30年を迎えます。それを記念して7月に日本演奏ツアーを行うことになりました。日程は下記の通り、各地で8つの演奏会を持つ予定です。

・7月14日(土)13時30分:東京・八重洲ホール (Tel:03-3867-8816 / 永島)
マドリード王立音楽院で一緒に学んだ東京在住のギターリスト・永島志基とのジョイントで、
それぞれのソロとデュオ演奏による「スペインの今と昔」コンサート。

・7月15日(日)14時:熱海・MOA美術館 (Tel:0557-84-2500 / MOA美術館コンサート係)
MOA美術館フロアー・コンサート出演、ソロ・リサイタル。コンサート入場券で美術館見学可。

・7月16日(月・祝)16時:小田原市民会館小ホール (Tel:0465-23-3881 / 小田原楽友協会)
ソロ・リサイタル。

・7月20日(金)18時30分:大阪・東大阪イコーラム・ホール (Tel:0120-23-6689 / 奈良新堀ギター音楽院):ソロ・リサイタル。

・7月21日(土)18時30分:広島・東区民文化センター(Tel:090-4148-3775 / 石原)
マドリード王立音楽院で一緒に学んだ広島在住のギターリスト・石原圭一郎とのジョイントで、それぞれのソロとデュオ演奏によるコンサート。

・7月22日(日)14時:岡山・西川アイプラザ (Tel:086-232-8098 / 岡山新堀ギター音楽院)
ソロ・リサイタル。岡山新堀ギター・アンサンブルとの共演あり。

・7月27日(金)19時:東京・GGサロン・コンサート (Tel:03-3530-5342 / GGショップ)
クラシック・ギター専門誌「現代ギター」社主催GGサロン・コンサート出演、ソロ・リサイタル。

・7月28日(土):横浜・人形の家赤い靴劇場(Tel:0465-62-2970 / オフィス高木)
ギター・ソロおよび、横浜在住のフルーティスト・先崎里美とのデュオ演奏によるコンサート。終演後、「人形の家」見学入館サービス券付。

 ソロ・リサイタルの第一部では、私が敬愛するブラジルの生んだ偉大な作曲家H.ビラ=ロボス(本年2012年は生誕125年に当たります)を讃えて、この作曲家の美しいギター作品をいくつかまとめて演奏します。そして、スペイン人現代作曲家A.ヌニェスの電子音楽とギターのための「弦囲地帯」。風変わりな作品ですが、とても興味深い曲です。第二部は、近現代のギターのためのスペイン音楽を集めて。V.アセンシオの「バレンシア組曲」、A.ガルシア・アブリルの「エボカシオン4番」、J.ロドリーゴの「ファンダンゴとサパテアード」など。終わりに「アルハンブラ宮殿に魅せられて」と題し、A.バリオスの「アルハンブラの小川」、E.モラーレス=カソの神秘的な「リンダラハの庭」、そして有名なF.ターレガの「アルハンブラの思い出」、世界遺産・アルハンブラ宮殿にちなむ3曲を演奏し、色彩豊かなスペインの風景の移り変わりをギターの音色で表現します。

また、素晴らしい音楽仲間であるフルートの先崎里美、ギターの永島志基や石原圭一郎らとの共演でも、スペイン音楽を中心に興味深いプログラムを組んであります。
ギター演奏を通して、30年という長い年月を過ごしてきた第二の故郷であるスペインの空気を日本の皆様にお伝えできたらと思います。
どうか、ご都合の良い場所または日時のコンサートにぜひいらしてくださるよう、そして多くのお知り合いの方々に「高木真介スペイン在住30周年記念日本演奏ツアー2012」のことを広くお知らせいただくよう、切にお願い申し上げます。
お問い合わせは、各コンサートのお問い合わせ電話番号までお願いいたします。

以上、今回のスペイン便りは私事ばかりになってしまいましたが、最後までお読みくださり、ありがとうございます。7月にお目にかかれることを心から楽しみしております。
ごきげんよう。

マドリード、2012年5月24日 高木真介
Masayuki Takagi

 

【付録・CD“SERENATA ESPAÑOLA”のブックレットより】

「イントロダクション」

 このCDにおいて日本人ギターリスト高木真介は、そのタイトルから読み取ることができるように、スパニッシュ・ギターのための音楽によるセレナーデを聞かせてくれます。これらの楽曲を通して、「弦と木製の井戸の中に潜んでいる妖術」(あるスペインの詩人はスパニッシュ・ギターにこのような洗礼名を与えました)のみならず、スパニッシュ・ギターとその音楽を熟知した、素晴らしい演奏家の確実で洗練された音楽的技術をも鑑賞することができます。高木真介は、シグエンサ市における「ロマニリョス=ハリス・ギター属製作および楽器器官研究協会」主催の音楽イベントへの、岡山新堀ギター・オーケストラを日本から招聘、シグエンサの聴衆から絶賛されたソロ・リサイタルを行う、などの協力をしてきました。彼のスパニッシュ・ギターやその製作家たちを奨励することへの関心は、スペイン人ギター職人により製作された3台のギターを使用しての録音をこのCDに収めたことからも窺い知ることができますが、私はその行為に個人的に感謝します。

ホセ・ルイス・ロマニリョス

「スペイン、音楽の旅」

 広範囲にそして多くのニュアンスを含めて言えるが、ここに演奏される一連の楽曲は、スペインをそして最も純正なスペイン音楽を、朗読しているかのように、あるいは絵巻物のように、または幻影のようにと、私たちに多様多彩な姿で映し出してくれる。しかもそれは、演奏をする上でもっとも難題である感情表現のためには大変優れた一つの楽器を伝達手段として選び行われているが、それらの感情表現は大半がその楽器から、もしくはその楽器を持ってして生まれてくる。その楽器はギター。そして、素晴らしい19世紀の日没から20世紀全体を通して繰り広げられている。ここに紹介するこのCDは、回想性の非常に高い一連のイメージを通して、時間と空間の幻想的な旅へといざなってくれる。最初の曲は、際立ってスペイン的な音楽家として認知されるホアキン・マラッツ(1872-1912)のよく知られた作品、夕暮れ時と夜想的な情景を思わせる「スペイン風セレナーデ」、続いてイサーク・アルベニス(1860-1909)の傑作「コルドバ」。この曲においてアルベニスは、歴史的回顧と絵画的情景を総括するに至っている。この2曲によるスペイン南部らしい退廃的で牧歌的な夜の情景は、突如、ホアキン・ロドリーゴ(1901-1999)のモダン派でカスティーリャ風の「ファンダンゴ」(3つのスペイン風小品より)の冒頭の和音、日の出の生命みなぎる太陽の光が容赦なく夜の闇を裂く様な途方もない不協和音によってかき消される。この眩いまでの閃光の後、旅人は、時間の止まってしまったかのような昼下がりのけだるそうな光の中で、波のない静かで穏やかな海を辛抱強く、または諦めをもって眺め続けているような地中海沿いのレバンテ地方にたどり着く。ビセンテ・アセンシオ(1908-1979)の全3楽章を通して貫かれた内面志向による「バレンシア組曲」、同様にアントン・ガルシア・アブリル(1933)のメロディアスな静けさの「エボカシオン第4番」が、その情景を見事に描いている。ここまで来て、旅人は後ろを振り返り、典型的な18世紀の調べを思い起させるエンリケ・グラナドス(1867-1926)の、ピアニスティックな原曲にミゲ-ル・リョベート(1878-1938)による感動的な編曲が施された「ゴヤのマハ」と出会う。すると再び、ロドリーゴの3つのスペイン風小品の終楽章である「サパテアード」が、「ファンダンゴ」ほどではないにせよ、激しく響き始める。この「サパテアード」は、グラナドスのゴヤの影響を受けた回顧主義と、サロン的かつ舞踏的で、ほのかに郷愁を感じさせるアルベニスの「セビーリャ」の絵画的な世界への回帰との間をつなぐ架け橋の役割を果たしている。そしてここから、多くのロマンチックな旅人がみなそうするであろうように、この旅はグラナダのアルハンブラへと締め括られていく。フランシスコ・ターレガ(1852-1909)による「アルハンブラの思い出」におけるロマンチックなグラナダ風トレモロと、1999年にエドゥアルド・モラーレス=カソ(1969-)が作曲した、アルハンブラ美学の講義をまったく一新したかのような「リンダラハの庭」との間には、ほとんど一世紀の時間の隔たりがある。この作曲家は作品の中で、瞑想に秘められた静けさと激昂した興奮のコントラストを見事に描いていて、私はその感情の交錯(恍惚と快楽)が気に入っている。あたかもワシントン・アーンビングが、ギターの音色とその愛のセレナーデに誘われるちょうど前に、リンダラハの噴水の静かなせせらぎを子守唄に昼寝をしてしまったかのように。

ハビエル・スアレス=パハーレス

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