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サロンコンサート
REPORT:「対話と演奏」 Vol.5:アレクシス・バジェホス ~アルカンヘル、バルベロ・イーホ、マヌエル・カセレスを弾く

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南米チリ出身で現在は日本を中心に国際的に演奏活動を展開している新進ギタリストアレクシス・バジェホス氏を迎えてのサロンコンサートが2016年9月11日 アウラ第一試奏室にて開催されました。サロンコンサートは昨年に続いての出演。今回はアウラがその創業当時から親交を深めてきた3人の製作家たち、アルカンヘル・フェルナンデス、マルセロ・バルベロ・イーホ、マヌエル・カセレスのギターを弾き比べの趣向でお楽しみ頂こうというぜいたくな企画。当ショップならではの充実した楽器リストと気鋭のギタリストとの組み合わせに期待は高まり、当日会場は満席。注目の演奏会レポートをお届けいたします。

*当日の使用楽器を含めた楽器解説をご覧になりたい方は、まずは下の画像をクリックしてご閲覧下さい。

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<第一部>

1.シャコンヌ(Silvius Leopold Weiss)
                                       使用楽器 マルセロ・バルベロ1世 1950年
2.セピア色のトナーダ(Juan Antonio Sanchez)
                                      使用楽器 マヌエル・カセレス アウラオリジナルモデル 2015年

3.ドン・ペレス・フレイレ(Agustin Barrios)
                                      使用楽器 マルセロ・バルベロ・イーホ 1999年

4.フリア・フロリダ(Agustin Barrios)
                                       使用楽器 マルセロ・バルベロ・イーホ 2002年

5.バイロンゴ・カンペーロ(Jose Luis Merlin )
                                      使用楽器 マルセロ・バルベロ・イーホ 1988年

6.ミストラルの呼び声(Gerardo Caviedes)
                                      使用楽器 アルカンヘル・フェルナンデス 1976年 杉

今回のイベントに合わせ特別出品となったマルセロ・バルベロⅠ世1950年作の名品。
アルカンヘル・フェルナンデスがギター製作を始めるきっかけとなったこの稀代の名工の作こそこのコンサートの幕開けにはふさわしいでしょう。ヴァイスの気品と憂愁を繊細なタッチで弾ききり、1曲目から深い感動をよぶ演奏となりました。

2曲目以降、奏者と同郷のチリ出身の作曲家やバリオスの名品、近年日本でも人気の高いアルゼンチン出身のギタリスト メルリンの作など、奏者と音楽的感性のうえでも通ずる部分が多いであろう楽曲では、いよいよバジェホス氏の指も表現も冴え、南米的な情感と繊細な筆致を余すところなく、しかしあくまで上品に奏でました。

ここで使用されたマヌエル・カセレスの新作は、全体的に硬めの引き締まった音で明るく爽やかに鳴り、全体に重厚さが際立っている印象が強いマドリッド派の中では、やはりひときわ個性を感じさせる作家なのではないかと思わせました。また続く3曲ではマルセロ・バルベロ・イーホの80年代、90年代、2000年代の作をそれぞれ弾き分け、時代ごとの音色の変化を如実に体感できる、来場された方にとって貴重な体験だったはず。

一般的には晩年に向けてその完成度を漸進的に高めていったとされる製作家なのですが、やはり比較的若い時期のものも非凡な才能の証左となる素晴らしい出来。メルリン作曲の「バイロンゴ・カンペーロ」を聴いた瞬間、誰もがそう感じたのではないでしょうか。

第一部の最後はバジェホス氏の友人による作。ここで名匠アルカンヘルの1976年作を演奏。曲の幽遠な雰囲気とロマンティックな情感を十全に表現するために、バジェホス氏が杉材を使用したアルカンヘルをセレクトしたのも納得の演奏。現代的な筆致による難曲を、さすがのテクニックで弾き切り会場を沸かせました。

<第二部 特別対談> 「スペインギターの真髄、わが友アルカンヘル」
田邊雅啓(クラシックギター製作家)X 本山清久(ギターショップアウラ)

第二部は恒例となった対談シリーズ。今回はアルカンヘル・フェルナンデスとスペイン留学時以来長年の友人関係にあり、当社創業よりその数々の名品を世に送り出してきた、アウラ会長 本山清久 と自身も多大な影響を受けたという製作家 田邊雅啓氏の対談。テーマはフランクに、友人としてのこの名工の人となりを語っていただきました。製作家としてどのような矜持を抱いていたか、努力しているところを他人には見せないところがあった、等々、実に興味深い話がいくつも聞くことが出来、来場者の知的好奇心を刺激する内容で展開されました。

<第三部>
1.シャコンヌ (J.S.Bach)
                                      使用楽器      アルカンヘル・フェルナンデス 1965 シープレス
2.ノクトゥルノ(Federico Moreno-Torroba)
                                      使用楽器  アルカンヘル・フェルナンデス 1985
3.南のソナチネ~カンポ/コプラ/フィエスタ~(Manuel Ponce)
                                      使用楽器  アルカンヘル・フェルナンデス 1985

第三部は全てアルカンヘルのギターを使用しての演奏。第一部の一曲目と呼応させるかのようにバッハのシャコンヌで始まります。この曲でバジェホス氏は1965年作の松・シープレス仕様をセレクト。分離の良い響きが耳に心地よく、程よくつややかで奥行きも感じさせる鳴りは、シープレス仕様ギターの最上のものだからこそでしょう。バジェホス氏の演奏はここでも繊細さを極め、実に上品に不足なくこの大曲を弾き切りました。

続く2曲はバジェホス氏の得意中の得意のレパートリー。1985年作のアルカンヘルを用いての演奏。
そのダイナミズム、タッチへの敏感な反応、曲趣の豊かさ等々、演奏、楽器ともにその実力が余すところなく発揮されプログラム中の白眉と言える内容。ギタリスト、楽器、楽曲の最も良い姿が心ゆくまで楽しめる稀有なコンサートとなりました。


<アンコール>
別れのトナーダ (Juan Antonio Sanchez)

満場の拍手に答えてのアンコールは再び同郷チリの作曲家ホアン・アントニオ・サンチェスの「別れ」をテーマにした曲を演奏。充実したプログラムを締めくくるにふさわしいセレクトでコンサートを終えました。


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