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2.ペドロ・バルブエナ工房

 マドリッド東外れの大通りから一つ入った裏通りを少し歩くと、ペドロ・バルブエナの工房の前に出る。少し立て付けの悪そうな扉が開かれると、バルブエナが目をギョロッとさせながら顔を出した。入り口近くに作業台が置かれ、作りかけのギターがすぐ目に飛び込んできた。彼はヒールの部分にバインディング(縁巻き飾り)を巻いている所だった。

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 挨拶した後に本山氏といろいろな話が飛び交う。壁に掛けられたテンプレート(型)や冶具類、桟積みされた材料や仕込んであるネックや表、裏板で工房がいっぱいで、十二畳くらいのスペースが狭苦しく感じられる。

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 今作りかけのギターはアウラに納品されるもので、厳選された材料を使用していた。裏横の木目はとても美しく、写真を撮らせてもらう。ギターを手に取って軽くポンポンとたたくと「それじゃわからないだろう。」とサウンドホールに詰めてある埃よけのスポンジを抜いてくれた。駒のついていないそのギターからは、彼らしい甘く力強い音が抜けてきた。出来上がりがとても楽しみである。高音部に力木を斜めに入れているとのこと。そして、製作のこだわりや材料についてなど熱く語ってくれた。彼は修理にも精通し、貴重な技術も教えてくれた。

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 工房中に漂う木の芳香。木は削ることでなお匂いを発する。彼は長年の製作で木を削ることにより、とりわけ杉の木屑で体を悪くしているらしいが、体に気をつけて、いつまでも元気でギターを作って欲しい。二つある作業台の一つは息子のものだろうか。彼のこの技術も息子に伝えられることを願うばかりである。

 最後に彼がすぐ隣のバルでコーヒーを振舞ってくれた。泡だったカプチーノがいつにも増して美味かった。そして抱擁と握手を交わし、彼の手のゴツゴツとした厚みを感じながら工房を後にした。

 


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