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清水優一 第3話

清水優一③(Guitarra Española ~受け継がれていく伝統~)

その後マドリッドではマヌエル・カセレスの工房に何度か訪れたが夏休みの時期だったのかずっと閉まっていた。
他にはマリアーノ・コンデの半地下になっている工房を見学させてもらった。
マリアーノ・コンデの工房では本人は夏休み中だったが、イーホが工房に居て、出来上がっているギターを弾かせてもらう事が出来た。
ホセ・ラミレスがやっている店でも工房を見させてもらいたいと伝えたが、丁度今1か月間の夏休み中で仕事が再開されるのが9月に入ってからだという事で断念。
その少し後にシグエンサにある古い教会でエレナ・パパンドレウ氏が普段使っている80年代?のロマニリョスと工房に伺った時に見せていただいたラ・メディ オ・シグロを弾くというコンサートがあり二台のギターそれぞれ全然キャラクターが異なり、二台共石造りの教会の中で美しい音色を響かせていた。
場の雰囲気も含めて日本では出来ない貴重な体験。コンサート終了後、会場で突然日本語で話しかけられ、どこかで見た事がある顔だと思っていたらオスカー・ギリア氏。氏はとても日本語が上手でしばらく色々な話を聞かせてもらった。
その後はシグエンサ郊外で行われていた野外音楽フェスティバルでハビエルさん達と朝まで過ごし翌日マドリッドの宿に戻った。
次はいよいよグラナダに行こうという事を決めマドリッドから高速鉄道AVEでグラナダに向かった。
グラナダは私が思い描いていたスペインのイメージそのままで、街にはフラメンコギターを奏でる人がちらほらといて街並みもとても美しく、それほど広くはな い街の中にギター工房が点在していてまさにギターの故郷といった感じの街だと感じた。(マドリッドやシグエンサがあるカスティージャ地方は荒涼とした気候 でしたが、グラナダはもう少し潤いがある感じがする。因みにバルセロナの梅雨時は日本みたいにじめじめしている。行く前にはよく解っていなかったが、ス ペインといっても場所によってだいぶ気候が違う。)
グラナダで泊まった宿の従業員の人でフラメンコギターを弾いている方がいたので、何軒かの工房の住所を聞き、まずはアルハンブラ宮殿へと続くゴメレス坂の途中にあるフランシスコ・マヌエル・ディアスの工房に向かうことにした。

マヌエル・ディアスはイーホと一緒にたくさんの道具やギターがひしめきあった工房で仕事をしていた。
とても親切な方で一通り工房の中を見させてもらった後、氏にアントニオ・マリンの工房の住所を教えてもらい、アルハンブラ宮殿近くにあるアントニオ・マリンの工房に向かった。工房の前まで行くと扉が少し開いていたので中を覗いてみると正面にアントニオ・マリンが仕事をしていて手招きしてくれ、中に入ると隣にはホセ・マリン、奥ではホセ・ゴンザレス・ロペスが縁巻きを接着するのに巻いた紐を外していました。
アントニオ・マリンには自分の作ったギターを見てもらい貴重なアドバイスをいただいたり、私が工房に居る間にも色々な人が出たり入ったり、まさに本場のギ ター工房という感じでしたね。とてもやさしく、カッコいい方でした。グラナダには暫くの間滞在していたのでその後も何度もアントニオ・マリンやマヌエル・ ディアスの工房にはお邪魔して作業している所を見学させてもらった。
アントニオ・マリンの工房では他の皆が夏休みを取っている時もアントニオ・マリンだけは一人工房に出て仕事を続けていて、本当にギター製作が大好きなのだなという事が伝わってきました。
グラナダではその他にへスス・ベジート、現地でお会いした親切なグラナダ通の日本の方に連れて行ってもらったラファエル・モレノ、フアン・M・ガルシア・フェルナンデス等の工房にも伺い作業の様子を見学させてもらった。
ラファエル・モレノにはビールをご馳走になり、氏もビールを飲みながら丁寧に縁巻きを巻く仕事をしていたのがとても印象的だった。

へスス・ベジートの工房 ではセラック塗装をしている所を見させてもらった。
グラナダで滞在していた宿にはアメリカのJAZZギター製作家でクラシックギター製作の勉強に来て いた方や、ベネズエラから来ていたフラメンコギターコレクターの方等長期で泊まっている人が多く、夜には語り合ったりコンサートやタブラオに行ったりと楽 しい日々を過ごした。(現地でお会いした日本のバイラオーラの方達に有名な洞窟のタブラオに連れて行ってもらったりもした。)
グラナダに居る間にはアルバイシン地区にあるサンニコラス展望台で洞窟住居に住んでいるちょっと変わった人とも知り合いになり、自宅に遊びに行った。中は8畳くらいの部屋が2つとキッチンがあり意外に広く、辺りは電気が無いので真っ暗でグラナダの街の夜景が一望出来、とても綺麗だった事が思い出される。
グラナダは、とても快適で名残惜しかったが、その後はバスに揺られてコルドバに向かった。
コルドバではロマニリョスの口輪のモデルになっているメスキータに行ったり、ギター工房ではマヌエル・レジェス・イーホ、グラシリアーノ・ペレス、エルマ ノス・ペーニャ(パコ・ペーニャの親戚の工房です。)等の工房に伺いグラシリアーノ・ペレスの工房ではビセンテ・アミーゴのギターの製作過程を見られたり、エルマノス・ペーニャ工房では地下に保管している大量のシープレスの原木を見せてもらった。
ある日エルマノス・ペーニャ工房で知り合ったカンテ歌手 の方に地元のフラメンコ仲間の寄り合いに連れて行ってもらいコンサートやタブラオとはまた違った素朴なフラメンコの魅力を感じることが出来た。アンダ ルシア地方ではフラメンコが自然と人々の間に溶け込んでいる感じがした。そこで飲んだ独特な味のコルドバワインがとても美味しかった。
コルドバの後はマドリッドで数日マヌエル・カセレスやマリアーノ・コンデの工房に伺ったりして過ごし、その後バルセロナに戻りフレタの工房に行くことにした。
工房では自分のギターを見てもらい貴重なアドバイスを頂き、製作中のタイコ(ボディー)まで出来たギターを見せてもらったり工房の中を見させてもらったりした。
フレタ3世はとても気さくな方だった。

そして、数か月間のスペイン滞在が終わりを迎えた。


今回スペイン各地の工房を回ってみて色々な製作家の方からいただいたアドバイス   Poco y Poco (少しづつ)
流れの速い現代社会の中でスペインのギター工房ではとてもゆっくりとした時間が流れ、皆さん本当に丁寧に楽しみながら仕事をしている印象でした。
特にアンダルシア地方の工房では訪問者が入れ替わり立ち代わり訪れ、話をしたり修理のギターを持ってくる人がいたりと土地に根付いた奥深いギター文化というものを感じることが出来ました。
突然の訪問にもかかわらず快く見学させていただいた製作家の方々、友人や現地で出会った方々どうもありがとうございました。
この経験を糧にし、これからの自分のギター製作を地道に進めていきたいと思います。
そして、またスペインに行きたいと思う今日この頃です。


清水優一

 

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