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佐久間悟 第2話

佐久間悟②(Guitarra Española ~受け継がれていく伝統~)

  講習会が始まり、10数カ国から集まったギター好きが旧修道院の半地下に潜り、 楽しげにワークショップで楽器を作っている、その空間はスペインの日差しのように 熱いものでした。時折、各自休憩を挟みながらコーヒーを飲んだり、ギターを弾いたり、 談笑したり、とても自由なものでした。 FH000036 かといって製作を途中で放り出すような人は誰もいません。 朝から晩まで木クズにまみれ、楽しんで製作しているのです。 心底製作が好きな連中が集まった講習会です。 FH010012   その中心で熱弁を振るい、図説し、実演する巨匠ロマニリョスの姿がありました。 材料、道具、ジグ、簡便な木工機械にいたるまで揃えて、全てを公開していました。 その姿は参加者の中で飛び抜けてギターが好き、製作を愛している一人の人間に映りました。 国籍も年齢も問わず、自分が苦労して手に入れたスパニッシュメソッドを伝える、 その事自体がギターに対する愛情そのもの、巨大な存在感を持つ名工でした。 FH000027 しばらくして気づいたのは、徹頭徹尾、まやかしのような曖昧さがない、 非常に合理的で科学的な姿勢を貫いていること。 良い音(もちろん各自理想の音があるでしょう)にとって一番良いシステム、 すなわちスペイン伝統工法を採用しているわけです。 具体例は公開しませんが、楽器本体、工程、ジグの細部に感じる事ができます。 名工を絶対視しがちな日本人的価値観を180°変えられました。 これは本数を沢山作ればより良い楽器が作れる式の考え方と一線を画すもので、 丁寧に実験を繰り返す研究者の姿勢です。 講習会の中で楽器の組み立てまでをひと通り経験したわけです。 それは良い素材を選び、良い性質を引き出し、無理なく正確に組み上げる、 至極当たり前な作業に他なりません。 しかしその当たり前さの延長線上に銘器は産まれる事を知りました。 それが講習を通じて得たものです。

 

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