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佐久間悟 第3話

佐久間悟③(Guitarra Española ~受け継がれていく伝統~)

  ロマニリョスはギターの系譜の中に自分を位置づけ、その歴史を後世に残すために国籍を問わず、伝統工法を公開しました。 東の果ての島国でその思いを受け継ぐ人間がいてもいいでしょう。 私はこの10年、飽きもせず同じモデルを作り続けて来ました。 「当たり前さ」を身につけるために反復して来たとも言えます。 その中で同じことを繰り返して見えて来るものがあります。 それはロマニリョスの工法の融通無碍な優秀さ。 正確に組み上げる意味でも作り手の技量が直接反映されるメソッド。 そしてロマニリョスが望むかは別として…使い方によっては様々なタイプの楽器にも応用が可能である、そんなシステム。 それは思いつきではなく伝統の上に乗って積み上げられた工法でしょう。 良い音を求めて名工たちが歴史を作って来ました。 その一番大切な部分が表面板の放射状に伸びたファンストラッツ、扇状力木の配置に集約されています。 ボディーの大型化に伴い、豊かな鳴りを実現するために採用されたアイデア。 スペインの名工が残したい大切なものです。 時代は下り、ギターは世界の国々で楽しまれています。 様々な実験的取り組み、製作も音楽も行われています。 私は多様性の中から素晴らしい楽器が出て来ることを否定しません。 ラティス、ダブルトップ、新素材も良いでしょう。 ただロマニリョスが教えてくれた方法は歴史を積み上げて来た、いわば証明済みの工法です。 それを踏み固めてさらに上に積み上げる必要があると考えます。 もしかするとスペインでの講習会に参加して肌で感じたものは、その歴史の重みだったのかもしれません。 建築と似ています。 一つずつ石を積み上げて大きな聖堂を建てるように。ゆっくりと着実に、そして楽しみながら。 最後に。 工法だけでは説明の付かない音の個性もあります。 アートの部分とも言えそうですが、その人間の個性に負うところも大きい。 技術と感性、その人の豊かな人間性を感じられる楽器、それが銘器と言われるものの条件なのかもしれません。 目に見えない部分ですが、そこも忘れてはいけない気がします…。 東の果ての島国から来た若者に別け隔てなく教えてくれた名工ロマニリョスに感謝して筆を置くことにします。  最後までお付き合い頂いた皆さん、ありがとうございました。 終spain

 

第2話


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