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2.ことの始まり

 痛みはありませんでした。ですから、そこそこ弾ける。しかし、それがかえって私を苛立たせました。 私の左手は、まるでからかうように、肝心なところにさしかかると言うことをきかないのです。ちょうど足がもつれて、ころぶようなものです。もちろん、治療をしました。鍼を打ち、注射を打ち、消炎剤を飲み、マッサージをし、体操をやりました。注射は左手首に直接入れました。今思い出すと自分でもぞっとします。これは1回しかききませんでした。もっとも効果があったのは、指圧でした。しかし、この治療も、しばらく続けると次第に効果が頭打ちとなり、最終的に私の指に問題は見られないと宣告されてしまいました。つまり、これ以上はなおらないと。限界への諦めがじわじわと広がります。でも、この宣告には一筋の希望がありました。少なくとも、この先生の感触では、私の腕や指に問題はないのです。もしかしたら私の脳や反射神経があのショックから立ち直れないだけなのかもしれない。この一縷の望みは、その後長期にわたって何度となく練習を再開する原動力となりました。
ところで治ったといっても、私の演奏レベルについて疑問をもたれる方もいらっしゃるでしょう。自分のレベルを客観的に述べることは難しいのですが、現在でも一晩のコンサートに困らない程度のレパートリーを暗譜していること、国際コンクールに出場した経験があるということから、ご判断いただければと思います。


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