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3.回復方法の概略

 読者の方は、「早くどうやったら治ったのか書け」と思われていることでしょう。一口に言ってしまえば、「左手の甲の側を改善した」ということです。ほとんど、このことに尽きます。具体的には、右手のラスゲアードの練習を、左手でやると考えていただければ理解しやすいと思います。しかし、ひとつのやり方で一挙に解決するわけではありません。無理の無いように、あくまで慎重に、薄皮を1枚ずつ剥いでいく感じです。あるパターンが効果があっても、1週間ほど続けると頭打ちになります。そうしたら別のパターンに移ります。前に効果があったパターンは、後になると効果がない場合がほとんどです。おそらくそのパターンに対応する部分がすでに回復してしまっていて、問題が別のところに移ってしまっているのでしょう。握る方向の練習はまったくと言ってよいくらい、効果がありませんでした。よくスポーツ用品店で販売されている握力を鍛える道具をいくつも試してみましたが、少なくとも私には効果がありません。しかし、これらの道具が良くないというわけでもないと思います。ギターは左右の指を酷使するのに、その末梢まで十分に血液を運ぶことについて、あなたは無関心ではありませんか。心臓から絶えず新鮮な血液を供給し、末梢から老廃物をいち早く回収するためには、適度に肩や腕を鍛えることも良い予防法となることでしょう。

 もうひとつ、(これを先に書くべきだったかもしれません)リラックスが大切です。自己催眠法にあたるのだと思いますが、腕を脱力し、深くゆっくり呼吸することによって肩から先の緊張をほぐすのです。これをバカにしてはいけません。一度トラブルに見舞われた手は、ギターを握ると無意識のうちに緊張して、悪いパターンから抜け出しにくくなります。力が抜けるとはどういうことか、何度も試して実感していただくと良いと思います。

 楽器をもった練習はどうやるか。セゴビアの全音階練習にまさるものは無いと思います。脱力の練習と考えてもよいし、柔軟と考えてもよいでしょう。負荷をかけるには速度を上げればよいのです。最近わかったことですが、動きの速度を上げるのはとても重要なことです。ゆっくりやってできるところは、いつかはできるようになります。でも、ゆっくりやっているだけでは瞬発力がつきません。また、速度が上がるということは脱力もできていることになります。否応なく脱力せざるを得ないといった方がいいかもしれません。

 以上で主なポイントはほとんど含まれています。私が今気がかりなのは、ではさっそくといって闇雲にこれらを実践することです。とくに、はじめのラスゲアードの練習は慎重の上にも慎重にやる必要があります。たぶん、手をこわすほど練習した方は、几帳面な性格の持ち主ではないでしょうか。ぜひ楽な気持ちでおやりください。回復は長丁場です。あせっては元も子もない結果となる恐れがあります。


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