HOMEエッセイ雑談 <製作家の素顔> > 1. ベルンド・マルティン材木屋になる
1. ベルンド・マルティン材木屋になる

-「この頃、製作家にとって良い材料の入手がむずかしくなっているようですね。」

本山「そうなんです。かなり深刻ですよ。我々は簡単に作品の良し悪しを口にしますが、一流製作家の作品は、どれ一つとっても、本当にわずかしか得られない良材からできているのです。」

-「そう思ってみると私のギターもまんざらではないかな。大切にしなくてはいけませんね。製作家のうちでとくに材料にうるさいのは誰でしょう?」

本山「やはりアルカンヘルでしょうね。木材業者に良い材料が入荷すると、まずアルカンヘルに連絡が入ります。見に行ってみて、彼が気に入ることはあまりありません。かなり良いものでも、こんなのは薪(たきぎ)だ!なんて言うんですよ。」

-「頑固者のアルカンヘルらしいですね。」

本山「横・裏材などは、比較的入手が楽と言われるインディアンローズウッドですら最近は規制等があるらしく、良材は本当に入手が困難です。何とか入手したものをアルカンヘルに見せたら、これも薪(笑)。そのあとレジ ェスにも見せたんですが、2枚ほど選び出して、もしかしたら駒か何かに使えるかもしれないと言うんです。たぶん、今もあの時のまま棚の上に置きっぱなしになってますよ。」

-「材料に厳しいんですね。」

本山「よい材料を買うのが大変なので、先日ベルンド・マルティンはとうとうスプルースの大木を一本まるごと買い取ることにしたんです。もう昨年の冬の事になりますが、ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争で財産が無くなったチェコスロバキアの貴族が、森の木を自分で選んで持って行けというので、彼が話に乗り、車を運転して取りに行ったんです。ところが、あまり使えるところがなかった。それで、製作家仲間に売りに行ったんです。そうしたら、「お前、いつから材木屋になったんだ?」って(笑)。雪にまみれての大奮闘 の結果が、旅費も出なかったと言う結果になったわけです。でも懲りないで、今度は今年の冬にバレンシアのさる木材業者と組んで、トラックで行きたいと言っていましたが。」


yomimono yomimono