HOMEエッセイ雑談 <製作家の素顔> > 3. 孤高の人 ロマニリョス
3. 孤高の人 ロマニリョス

-「ロマニリョスはアルカンヘルと仲がいいとか、以前現代ギターのインタビューに載っていましたが」

本山「うーん、特別に仲良しというわけでもないけど、お互い考え方は異なっても、仕事に対する取り組み方では相通じるものがあるのか、認めることの出来る数少ない相手という意識はあると思います。」

鎌田「つまりアルカンヘルしか話相手になってくれないんじゃないですか?(笑)」

-「彼もアルカンヘルみたいに、なかなか癖のある人のようですね。」

本山「そうです。イギリスのシムリーもスペインのギホッサも本当に静かな小村で、自然の中で静かに音楽と思索と研究に打ち込むのが好きなのです。ただ、職人の自慢やギタリストの驕りに対しては、たまに我慢が出来なくなるようです。そんなところが災いするのか、製作家としては最も近い考えをするマルセリーノ・ロペスや、演奏家として一番近しい間柄のブリームとも折り合いが悪くなったりしているようです。」

-「え? 恩人ブリームとも喧嘩したんですか?」

本山「よくわかりませんが、とにかくイギリスでは目と鼻の所にブリームの家が在りながらこのところ付き合いがないようです。先日もある著名ギタリストがロマニリョスに注文しようとしたんです。そうしたら、お前みたいな弾き方をするやつに作ってやるギターはない、と言って断ったそうです。」

-「なかなか大変な人のようですね。」

本山「歯に衣を着せぬ事を言う割にはとても寂しがりやなんです。そして何よりも今のギター界の、スピード偏重のいびつな音楽観や、PAの音に慣らされて自然な音を忘れ去った製作家と聴衆に強い危惧を覚えています。それでつい人とぶつかることになるのだと思います。」

-「今は息子とふたりで製作しているのですか?」

本山「いや、スペインのシグエンサ(故郷)にあるギホッサと言う小村に奥さんと二人でもどっていて、日夜製作とギター製作の歴史研究に打ち込んでいます。息子はスペイン語が話せないし、イギリスのシムリーの工房に残って製作しています。ですから現在、ふつうに手に入る新作は息子が製作したものです。」

-「もうロマニリョス自身はほとんど作っていないのですか?」

本山「作っていますが、ほんのわずかで、作りたいものだけを作っています。今回アウラに入荷した1本はその数少ない本人の作ですから、貴重です。本人は92年に引退してから4-5本程度しか製作していないはずです。そのうち幸いな事に前にも2本手に入れることが出来ました。この前はいつだっけ?」

鎌田「4年くらい前じゃないですか」

本山「現在は3巻からなるギター百科事典を執筆中で、スペインで製作しているギター製作家の履歴を書いてくれるように依頼しているのですが、ほとんど誰も返事をくれないと嘆いていました。講習会は講習会で、オーガナイザーや生徒にすぐ文句を言いはじめて、こんなものはやめた、来年はもうやらない、ということになる(笑)。しかも、みんな俺のことがきらいなんだ、とか言うんですよ。」

鎌田「自分にも問題ありですね。(笑)」


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