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11.マヌエル・レジェス工房編

 優しいグラナダの製作家たちの面影に後ろ髪を引かれながら、フラメンコギターで名高いマヌエル・レジェスに会いに長距離バスでコルドバへ向かう。整然と並んだオリーブの木々や、時たま見える白い壁にオレンジの屋根など、バスの中から見える絵画のような景色が、ゆっくりと流れて行く。どの景色ひとつとっても日本にはないので、飽きずにずっと眺めていた。季節によってはひまわりやけしの花なども咲き乱れるらしい。本山氏と、自身のスペインでの生活やエピソードの話で盛り上がりながら、町を二つほど通り抜けコルドバに着いた。

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 早速タクシーに乗り換え、マヌエル・レジェスの工房へ向かう。グラナダも暑かったがコルドバの方がなお暑い。町を行き交う人々の装いは10月も末だというのにまるで夏のようである。タクシーを降りて通りから石畳を歩いて行く。かつてのミドル・ロドリゲスの工房の脇を抜け、マヌエル・レジェスの工房に着いた。中ではマヌエル・レジェスに奥さん、そしてレジェス・イーホが挨拶と熱い抱擁で迎えてくれた。彼の工房はスペインらしい店舗兼工房になっていて、壁には歴代のギタリストの写真が連ねている。我々と入れ違いでギタリストらしい人がケースを持って出て行った。

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 本山氏はお土産を渡しながら、注文の確認と依頼をしている。寡作なので注文するのも大変である。いろいろ話をした後、イーホが工房の説明と案内をしてくれた。とても整理整頓された工房で、材料や仕込んだ部品があらゆる形で準備されている。年間数本の製作本数であるにもかかわらず、さらに今年は仕込みで終わってしまい、製作できなかったらしい。めったに手に入らないのも頷けた。(僕も「いやー、今年は仕込みで終わっちゃって、、。」なんて言えるゆとりを持ちたいと思った。もっとも仕込みだけではつまらないが。)ほとんど人には見せないという2階まで連れて行ってくれた。

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 レジェス自身からもいろいろなアドヴァイスやヒントを教わった。彼もまたやはり何十年と果てなき追求と試行錯誤を繰り返してきたのである。だからこそ出てくる彼の言葉の一つ一つがとても重い。激励の言葉とサインをもらって、感謝と感激の気持ちでしばらくぼぅーとしていた。

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 そうこうしているうちにレジェス家族から昼食の誘いを受けた。そもそも日曜日であるがこちらの都合に合わせて工房を空けて待ってくれていた上、そのつもりで奥さんも一緒だったらしい。連れて行ってくれたのは典型的なアンダルシア料理のお店で、ガスパッチョに生ハム、揚げた軟骨や香辛料の効いたモツのあんかけなど豚肉のオンパレードである。もちろんワインを飲みながら、とっても美味しく楽しい時間を過ごさせてもらった上、恐れ多くも僕までご馳走になってしまい、ただただ感謝でした。

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 レジェス家族に心の底まで優しくしてもらって、別れ際にはスペイン人並みに厚い抱擁を交わした。南部では親しい間では男同士でも頬にキスをするらしい。別れを告げ、イーホにタクシー乗り場まで送ってもらう間、酔いもありニコニコニコニコしながら歩いていた。タクシーで駅に到着し、しばらく待った後、AVE(新幹線)に乗り込んで、マドリーへ向かった。途中でA・ラジャにもらった表板をレジェスの工房に忘れたことを思い出し、慌てて、本山氏に連絡してもらった。後でアルカンヘルのところに送っておいてくれるとのこと。レジェスさん本当にお世話になりました。


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