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第6章 表面板のパターン

トーレスの作品のもともとの形状がどうであれ、彼は表面板の設計とレイアウトを完全に考え直さなくてはならなかった。彼はウェストの位置を、サウンドホールの下端に一致させ、ボディ長の約2/5としていた。
これは、ファンおよびホセ・パヘス、ヨゼフ・ベネディッド、ヨゼフ・アルカニス、イクナシオ・デ・ロス・サントス、ルイス・パノルモの作品に見られるように、先人達が確立した伝統に沿っている。
ブリッジ(駒)の位置を、ボディの下部の膨らみの位置から、振動の中心となる位置と一致させるために移動したことは、現代のコンサートギターの設計において基礎となる重要な点であり、新しい響きへ展開する上で、間違いなく、最も顕著な一歩であった。
同様の発想はトーレス以前に、ファン・モレーノとルイス・レイグによってなされていたが、これらの職人は気まぐれに試みただけだった。
モレーノは表面板にメープルを使っていたし、レイグはガラス製の表面板を導入したり、力木やネックを中空にしたりしていた。
トーレスは、鋭い判断力と、正しい姿勢と適切な材料による実験により、妥当な板の厚さを見出した。
その結果得られた音の変化は、小型ギターのリュートのような共鳴音に慣れた耳にとって、これまでにないものだったに違いない。
ボディの1/5くらいの位置に取り付けられていたブリッジが約1/3の位置(振動の中心)へ移動したことは、わん曲した表面板ではブリッジの位置が偏ったものに比べて優れた振動が得られ、したがって表面板にかかる緊張度は平均に拡散することを意味している。
このブリッジ位置の変更は、音の鋭敏さに新たな幅をもたらし、とくに低音の厚みに見られるように共鳴を増強した。そして、初期の作品に見られる打撃音を減らし、均一で伸びのよい音を楽器に与えることになった。
トーレス型が作り出した新しい響きがすぐに注目され、ヨーロッパ中のギター愛好家に広まったことは疑いない。

トーレスは同じ寸法の表面板で製作することはなかったと主張する研究者もいるが、これは次の例によって割引かれるべきだろう。
トーレスのギターには西洋梨型のギターを除いて5種類の基本的な設計がある。初期は偉大な実験の時期であって、第二期と同様、同じ設計と寸法で同じギターをいくつも製作している。
すでにこの時期、他の製作家に比べて寸法が大きい。1850年代の終わりに、彼はついに終生製作し続けるコンサートモデルに採用される大型の形状を導入した。
これがリョベートがコンサート用に使用したギターである。1864年、タルレガのために製作された寸法は、トーレスはほとんど使用していなかったと思われる。数種の異なる寸法が存在しており、彼がなぜそのように複数の寸法を採用していたのかを確認することは容易でない。
彼は、少なくとも初期に、基本構成を変化させた試作品をかなり製作していたと思われる。2つの半円と鋭くしぼられた胴をもつ外形は、最大限の強度が得られるように設計された頑丈な構造となっており、リブの厚みは1.0ミリしかないが、曲率によって強度が得られている。
トーレスのギター製作の見地は、外形の設 計過程にもうかがわれ、リブの曲率が大きくなっていく。他の関連する因子としては、材料の木が得られるかどうかがある。多くの場合(とりわけ安価なギターでは)材料が得られるかどうかで寸法が決まる。
トーレスは、高級なギターに適さない材料を使うために、「布の大きさに合わせて、コートの長さをカットしなくてはならなかった」。このような外形の調整は現在、2本の作品で確認できる。


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