トーマス・ホルト・アンダーセン 2016年 643mm 松・中南米ローズ
1977年生まれ。ロルフ・アイヒンガー、アントニオ・マリンらの薫陶を受け、現在はグラナダの地に工房を構えるデンマーク人製作家。グラナダ的な工作と音色的ニュアンスを十全に備え、そこにこの作家ならではの品が加わり、繊細でつつましく、しかし高い音楽的要求にこたえうる素晴らしいギターに仕上がっています。
なかばコスモポリタン化するこの都市において、最も世界的な評価の高まりを見せる作家のひとり。ややショートに設定したスケールも嬉しい、注目の新作、ぜひお試しください。
ホセ・マリン・プラスエロ 2004年 650mm 松・中南米ローズ
叔父のアントニオや近年目覚ましい成果を上げているホセ・ゴンザレス・ロペス、そして当店でも今年初お目見えとなったアントニオの実孫ホアン・アントニオ・マリン。
間違いなく現代のグラナダにおける最高の工房で、最もトータルバランスに優れた楽器をコンスタントに製作し続けているホセ・マリン。基本的なスタイルは一貫しているものの、その時々で微妙な作風の変化も感じられる製作家の、充実した時期の証左となる素晴らしい一本が状態良好で入荷いたしました。グラナダ的音色と人が口にするときに、そのイメージの中に最も円満に当てはまる作家のひとり。豪壮にして繊細、抜けるような明朗さと深淵さ。
ジョアッキーノ・ジュッサーニ 2001年 650mm 松・中南米ローズ
イタリアを代表する製作家の一人。たたずまいそのものは全く伝統的で、端正とさえ言えるものでありながら、いつもかすかな異彩を放つギターを製作し続けています。楽器がおのずと音楽的に鳴るというよりは、奏者が楽器との深い関わりの過程において、新たな音色を見つけ出してゆくような、軽いスリルを味わわせてくれるのも、このブランドの特徴でしょう。横裏板が厚く加工され、それに比較して表面板を薄めにしているところはオーストラリア系の楽器を思わせますが、内部構造は伝統的な扇状力木を独特な波形に加工して配置。豊かな音量と独特な音色を備え、それは多くのコンサートギタリストたちを刺激して、名手ぺぺ・ロメロをはじめ、個性的な演奏者たちに愛用されています。
モンテロ・ベジード 1970年 655mm 杉・ローズ
グラナダの2人の名工、1939年生まれのマヌエル・ベジードと1933年生まれのアントニオ・マリン。
同地の工房エドゥアルド・フェレールの同門である二人が、それぞれの独立前につかの間の共同作業をしていたことはファンの間ではよく知られています。アントニオはロベール・ブーシェとの出会いのあと、1979年にいよいよ独立した工房を開くことになります。若き日の二人が伝統への敬意を衒いなく1本のギターへと結実させた、渋い一本が入荷いたしました。
ルイス・アロステギ・グラナドス 1979年 655mm 杉・ローズ
1932年グラナダに生まれ、後にマドリッドで工房を開いた知る人ぞ知るブランド。グラナダでは同地の名工マヌエル・デ・ラ・チーカの工房に足繁く通い、ギター製作を学びましたが、その後は他の誰にも弟子入りせず、独学で製作の腕を上げてゆきます。1960年にマドリッドに移り工房を開いたあとは、いわゆるマドリッド的なニュアンスを持った良品を作り続けました。本作はエステューディオラインの一本ですが、やはり艶やかかでたっぷりとした響きが魅力の一本となっています。
ジャズやボサノヴァなど、オールマイティに弾きこなしたい方に。
ラミレス パラ・ロンダージャ 650mm 松・ローズ
1950~60年代にほんの一時期に普及していたラミレスの珍しいエステューディオモデル。ラミレスが他工房に発注して製作しており、特徴的な円形の青ラベルが印象的。年式やモデル、製造番号などが特定できず、また
同じラベルでも仕様や型にばらつきがありますが、なんといっても同じラインをビートルズのG.ハリソンが使用していたことで、ファンには忘れがたいモデルでしょう。音はたっぷりと、やや乾いた豊かな音量でしっかり鳴り、入門ラインといっても高いクオリティを維持していたスペインのギター文化の深さが感じられます。
G.ハリソンが実際に使用していたものとはヘッドシェイプ等若干異なる箇所がありますが、よきスペインヴィンテージの響きを備えたものとしてお勧めしたい一本です。
尾野薫 80号 ブーシェモデル 650mm 松・ローズ
音響と造作に対する厳格なまでの製作態度において、国内では屈指といえる氏の、期待にたがわぬ素晴らしい新作が入荷致しました。ブーシェ的な音響特徴を十全に備えながらも、倍音を抑制し、柔らかさの中にきりっとした印象を聴かせるギターに仕上がっています。これは安直なレプリカに陥ることを自らに厳しく禁ずる製作家の、深い矜持が表れているといえるもの。そしてブーシェユーザーさえも納得させる完成度。待望の新作です。
星光治 30号 トーレスモデル 650mm 松・ローズ
尾野薫の薫陶を受け、年間製作わずか1~2本の寡作ながら、新作ごとに確かな仕事の充実を感じさせる製作家。師のような厳格さとは一線を画し、弾く人を安心させる柔らかな感触が印象的。しかしながら各音はしっかりと不足なく引き締まっており、その絶妙なバランスがこの楽器をチャーミングとさえいえるような魅力的なものにしています。コストパフォーマンスも抜群の愛すべきギター。
今井勇一 YJ-1 1997年 650mm 松・中南米ローズ
1949年生まれの、現在の最も国際的な評価を集める国内製作家のひとり。多くの邦人ギタリストがコンサートやコンクール等で使用し、そのパワフルで機能的な響きと演奏性に、プロアマ問わず人気が高まり続けています。その彼が30代で到達した高い完成度を改めて確認できる一本が入荷致しました。
現在のLimited Modelと比較すると、より人間的でたくましい響きが体感できるギターになっています。現在新作は数年の予約待ちという、入手するのがもっとも難しいブランドだけに、貴重なプロフェッショナルモデルです。
星野良充 2007年 650mm 松・中南米ローズ
ギタリストの高い音楽的要求にも十全に応えうる楽器として、変わらぬ高い評価を受けているベテラン製作家。各音は常に凛としたたたずまい。音色自体は渋く、透徹とした響きが全体にとてもクールな印象を与えますが、音楽の表現におけるその色彩感は実は多様なものを持っており、それがクラシック音楽との深い親和性を生み出しているところがこのブランドの特徴でしょう。全体の意匠もやはり地味ながら、工作は精緻極まりなく、その方面での腕の確かさも人気のゆえんでしょう。
久保津奈夫 60号 トーレスモデル 2016年 650mm 松・ローズ
ある種のスペインギターで聴かれる華やかで甘い響きとは異なり、滋味溢れる、日本人の音色志向にも実によくフィットする響きを備えたブランド。音色、音量、演奏性すべてにおいて不足なく、そして絶妙の中庸を保った仕上がりは、じわりとファンを集め始めています。年間製作がおよそ一本という寡作中の寡作、その貴重な1本が入荷致しました。
コンデ・エルマノス A-26 フェリーペ 1988年 660mm 松・シープレス
このブランドの栄光を作り上げたファウスティーノやマリアーノらが在りし時代の最後の時期のもの。フラメンコという音楽の洗練化にも間違いなく一役を担ったブランドの定番の名にふさわしい一本が入荷致しました。シャープでありながらも音には適度な柔らかさがあり、響きも深く、もちろん演奏性も申し分なし。トータルクオリティの高い一本、おすすめです。
コンデ・エルマノス アトーチャ 1966年 660mm 松・シープレス
ファンにとっては嬉しい60年代のコンデ。時を経て渋みが増したサウンドはまさにリアルフラメンコ。おそらくはエステューディオラインのものかと思われますが、そのスペインとフラメンコの文化しっかり根差していなくては絶対に出てこない、唯一無二の音色はやはり素晴らしいものがあります。