グラナダ派のギター製作家達
LA ESCUELA RRANADINA DE GUITARREROS
THE GRANADA SCHOOL OF GUITAR-MAKERS
グラナダ県議会出版 編集責任者 ジョン・レイ (スペイン語 英語 対訳版)
この度、ジョン・レイ監修の資料的価値の高い本書が出版されました。
ジョン・レイと言えば、近年トーレスのフルコピーモデルの作品を発表したことでも有名な製作家ですが、
その歴史、文化に対する造形の深さは、完成度の高い彼の作品を通しても伺い知る事が出来ます。
グラナダ派の歴史的、文化的側面からの考察、現代のグラナダ派の製作家達を豊富な写真と共に紹介している
非常に興味深い内容となっています。
目次
1. プロローグ アンヘロ・ヒラルデーノ 著
[グラナダ、ギターのキャメロット]
伝説の王国の首都キャメロットに例え、グラナダの魅力とその地で培われて
来た、数世紀前に遡るギター製作の歴史について語るエッセー。
2. グラナダの製作家達 アルベルト・クエジャール著
グラナダの撥弦楽器の文化の歴史とそれを支え、発展に導いた製作家の歴史を写真や
設計図等の画像を交えて述べた120頁余の読み応えのある内容。
3. 製作家カタログ アルベルト・クエジャール著
グラナダで製作に携わる37名の写真とプロフィール、楽器のスペックと力木の配置図
写真を掲載したカタログ。
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4. 3つのエッセー
旧グラナダ派のギター製作 アローン・ガルシア著
16世紀から始まるグラナダのギター製作の足跡を振り返るエッセー
世界のギター界へ及ぼしたグラナダ派の影響 ダビッド・ガンス著
若き日の禰寝孝次郎氏の写真等も掲載、世界の製作界に及ぼした影響に
ついてのエッセー
バサ地方のギター ハビエル・モリーナ・アルヘンテ著
グラナダの文化の発信地であったバサの16世紀から20世紀までの
製作家について語るエッセー
冒頭より~
グラナダとギターが意味することは、アルハンブラ宮殿やヘネラりーフェ庭園に流れる歴史、文化、そこに流れる詩に他ならない。
グラナダの歴史は、神話と密接に絡み合っている為、ある事実を、単純明快なストーリーで語る事ができない。
古代において神話とは、人間性そのものだったし、どの時代、どの文化にも神話がいまだ息づいている。
19世紀半ば産業革命まっただ中のヨーロッパにおいて中東に対する憧憬は、芸術家を 浪漫派 から
新しい観念的な発想を可能にする詩的な世界へと向かわせた。
このことは、でたらめな思いつきではない。
詩的な世界は、人間の想像力をしばしば自然な形で働かせてくれることがよくあるのである。
ロマンチックな神話の有名なトポス(定型表現)は、「グラナダ」であるように
ベニスを除いて、心象と寓話がこれほど豊富に花開いた場所はグラナダ以外ない。
そのことは、ヨーロッパ、いや世界中で認められていることだと思う。
ムーア文明に属する都市、都市の憂鬱から長い間逃避し抑圧された魂にとって「グラナダ」は約束された土地となった。<続>