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谷川英勢氏による「ニュルティンゲンギターフェスティバル2016」レポート

昨今デュオ・トラサルディ(谷川英勢、遠藤峻)として活躍し、また、アウラ音楽院の講師でもある谷川英勢氏によるニュルティンゲンギターフェスティバル2016のレポートを掲載致します。

%e3%83%80%e3%82%a6%e3%83%b3%e3%83%ad%e3%83%bc%e3%83%89デュオ・トラサルディー最新CD作品「ダブルルーツ」

 

ニュルティンゲンはドイツのシュトゥットガルトから南に約30キロに位置する小さな町
そこで2年に1回ギターフェスティバルが開催されている。image1

今回のゲストはデビッド・ラッセル、マルコ・タマヨ、ラファエル・アギーレ、朴 葵姫、ロサンゼルス・ギターカルテット等の豪華な顔ぶれ。

朝から夕方までホールや学校などのレッスン室を使って様々なゲストのマスタークラスが行われ、毎日昼と夜にゲスト達のコンサートが行われた。

このフェスティバルはゲストとの交流も多く、昼食やコンサートの打ち上げなどで気軽に話すことができ普段は聞くことのできない貴重な話なども聞けるのが魅力の一つ。

以下、コンサートの様子を抜粋してお届けします。

初日のオープニングコンサートはコンチェルトのみで華やかにスタート。

朴 葵姫のコンサートでは、クラシックギターの王道レパートリーのアストゥリアスやコルドバからあまり弾かれることのない難曲旅人のソナタまで見事に弾ききって聴衆を沸かせた。
中でも彼女の得意とする森に夢見るは持ち味の美音と流れるようなトレモロのあまりの美しさに会場も静まり返った。image4

デビッド・ラッセルのコンサートでは、開演1時間前から長蛇の列ができており彼の人気の高さをうかがわせた。
内容もやはり素晴らしく、バッハやタレガなど1音1音が全て美しい。
最近は楽譜を見ながら演奏するスタイルをとっているとのこと。
コンサートは徐々に盛り上がっていき、最後にはスタンディングオベーションで喝采を浴びていた。image8

 

ラファエル・アギーレ
アギーレの生演奏は初めて聴いたが、まず特筆すべき点は何と言っても正確無比!

ここまでコントロールして演奏できるものかと感心しながら聴いていた。
動画などで聴いていた彼の演奏は淡々とそつなく弾いているイメージがあったのだが、実際は内に秘めた情熱がありそれを上手くコントロールしているような冷静で熱い演奏だった。image9

 

マルコ・タマヨ&アナベル デュオ
このデュオはとにかく凄かった。

超絶テクニックで有名なタマヨだが、奥さんのアナベルも全く引けをとらない。
2人のテクニシャンが織りなすデュオは本当に見事だった。
アンコールでは1本のギターを二人羽織で演奏し会場を沸かせていた。image13

打ち上げの二次会ではゲストとギターを弾いて遊ぶなど超貴重で贅沢な時間もあった。(実はこの時間が1番楽しかった苦笑)

他にも、フェスティバルではゲストによるマスタークラスも開催された。

以下に特に印象に残ったマスタークラスを紹介します。

朴 葵姫

朴 葵姫のクラスには、ギターを始めてまだ日が浅い子供から、コンクールの出場者まで幅広いレベルの受講生が参加していたがその全てに的確に指導していた。
常に音楽のこと流れを意識したレッスンで、彼女の美しい演奏の秘訣が垣間見えた気がした。
またギターのテクニック面では右手を安定させることの重要性について説明してくれて非常に参考になった。image3

マルコ・タマヨ

タマヨのレッスンでは特に技巧面での彼の考え方が印象に残った。
超絶テクニックを持つタマヨだが、新しい曲に取り組む際には一つ一つのパッセージを演奏するのに、
必要な演奏動作をゆっくり分析して、それを組み合わせていくとのこと。
実際に私たちが受講してた曲の速いスケールを初見で演奏して示してくれたため、とても説得力があったimage11

ラファエル・アギーレ

アギーレはいつも音楽と共ににあるような人で、レッスンの時も打ち上げの時も(笑)常に歌っている人だった。
レッスン中での彼の比喩の表現はとても素晴らしく、誰にとっても非常にわかりやすく教えることができる人だと感じた。
彼に引っ張られて受講生の音がどんどんと変わっていくのが印象的だった。image7

ウィリアム・カネンガイザー

カネンガイザーにはSilly songというジャズ風の曲で受講した。
この曲のような純粋なクラシックとは少し違うテイストを持つ曲はそのポピュラーっぽさを出すことに特に注意しなければならないとのこと。
チョーキングのやり方やリズムの取り方、メロディーの歌い方など目からウロコの内容が満載だったimage10

スコット・テナント

テナントはLAGQのメンバーでもあり、グループの中でも屈指のテクニシャンである。
彼の十八番のレパートリーであるカライジスコ・オロのレッスンではマケドニアのリズムでのアクセントの位置の重要性や、非常に多彩なカッティングの種類を教えてくれてとても参考になった。image12

最後に、受講生もリピーターが多く、2年前に来ていたメンバーとの再会も嬉しかった。image6

(朴 葵姫さんと支援者の方々、それから日本人の受講者達)


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