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ゲルハルト・オルディゲス Gerhard J. Oldiges

Gerhard J. Oldiges <ゲルハルト・オルディゲス>

<プロフィール>
1955年生まれ。
大学在籍中に楽器製作を始めるが本格的なものではなく、彼曰く「自宅の台所」で独学で作り上げてゆくというもの、しかし、これこそが彼のキャリアのスタートとなります。大学卒業後の1983年Jorg Couraの工房に弟子入りしギター製作を学び、1984年には専門家筋ではバイブルとされる‘Historical Lute Construction’を著したRobert Lundbergにリュート製作を師事。古楽器が持つ独特かつ繊細精緻を極めた意匠、音響学的アプローチへの彼の傾倒はこの頃に培われたとも言えます。そしてこれらの修行期間のあと、1985年にドイツマイスター制度による国家試験に合格し国家資格Geselle ゲゼレを取得。1986年に当時設立されたばかりのLakewood Guitars のリペア部門で働くことになり、ここで様々な種類の、しかも大量の楽器を修理することで得た知識は、のちに彼のギター製作の大きな糧となります。

1988年にホセ・ルイス・ロマニリョスのギター製作セミナーに参加。同じセミナーにウィーンから参加していたトビアス・ブラウンと意気投合し、ロマニリョスの名著「アントニオ・デ・トーレス」ドイツ語版をわずか1年のあいだに翻訳、校訂し発行するに至る。その同年1989年にはついにマイスターの国家試験にも合格し、満を持して自身の独立した工房を立ち上げるに致ります。最初のセミナーのあとロマニリョスとの友誼と信頼とを深めた彼は、その後同セミナーでのアシスタントを1996年と1997年に務め、2001年からはロマニリョスの住むシグエンサの地で開催されるセミナーでもしばしばアシスタントして参加(このシグエンサのセミナーには尾野薫、田邊雅啓、佐久間悟、中野潤らが参加しています)。

ロマニリョスとの出会いは彼の製作美学に決定的な影響を与え、トーレスを起点とするスペイン伝統工法と、とりわけハウザー1世への傾倒を強めてゆくこと になります。彼自身は自らの嗜好を閉ざすことなく、現代的な趨勢にも敏感に反応してゆく柔軟さと更なる研究への意志を持ち合わせている製作家ですが、その深い学識と実地の研究に基づいた結果として、彼の現在の製作哲学があるのだと言えます。つまり、偉大なるスペインの巨匠たちが成し遂げた音色とハウザー1世の確立した究極の音響指向性、時代を超えたそれらの美しさにこそクラシックギターの本当の美があるという認識に。

<彼の楽器について>
彼のプロフィールが如実に語る通り、彼のギター製作の土台となるものはアントニオ・デ・トーレスを起点とするスペインの伝統的なギター、すなわちマヌエル・ ラミレスとサントス・エルナンデス、ヴィセンテ・アリアス、エンリケ・ガルシアとフランシスコ・シンプリシオといった製作家達によるギターであり、そしてなんと言ってもヘルマン・ハウザー1世のギターです。トーレスの革命が音量増大に大きく寄与したのは広く知られるところですが、それは同時にギターとしての豊かな表情と繊細さをも同時に獲得したことを忘れてはならないでしょう。オルディゲスはスペインギターだけが持つ、この音楽的表情の豊かさに何よりも惹かれるこ とになるのです。しかしながら現代の演奏家、そして聴衆のニーズとして、コンサートホールでいかによく響くかを追求するためには彼にとってもう一つのモデルが必要となります。それがヘルマン・ハウザー1世です。ハウザーギターの持つ独特の音響指向性はどんなに繊細なタッチで弾かれた弱音でもその強さを失わないままホール最後列まで届く素晴らしい遠達性を備えており、音楽を犠牲にすることなく、ギターの最も美しい音を奏でるのに論理的に最適なモデルと考えられたのです。彼がそのキャリアの最初からこの稀代の、20世紀最大の製作家のモデルをそのラインナップの中心に据えていることはこうした理由によります(彼のハウザーモデルはかのジュリアン・ブリームが、彼が長年愛用していた1940年製のハウザー1世に非常に感触が似ていることから、1本購入している)。

そしてトーレスモデルやシンプリシオモデルと言ったモデルでも、彼は実作に近づくための不断の努力を怠りません。世に数多あるトーレスモデルがそのデザインだけを真似て本質とは程遠い楽器を世に出していることを考えると、彼の姿勢は反時代的で独特だと言えます。しかしながらそうして出来上がってきたギターは、そのオリジナルを彷彿とさせつつ、現代の知性によって再構築された新しい響きを備えた極めて素晴らしいものです。

良質な材の選択から妥協することなく、細部の工作は精緻を極め、まずは外観のその気品の高さに目を奪われます。厳しいドイツのマイスター制度を通過してきたその高度な木工技術が如実にその完成に寄与しているのは誰の目にも明らかでしょう。ボディは軽く、塗装も極めて繊細に施されたセラック仕上げによるもの。トーレスモデルやシンプリシオモデルでは古き良きスペインの情緒が現代の衣装をまとい蘇ったかのようですし、ハウザーモデルでは凛とした気品を隅々まで行き渡らせた硬質な響きが魅力的。単音、和音それぞれ分離が明瞭で雑味がなく、ストレスのない発音と適度のサスティーンも申し分ありません。簡単に鳴らすだけでも音楽的な表情があり、ギターとして必要な要素をすべて最良のレベルで備えています。

彼曰く、盲目的に過去の名工を追随するのではなく、ギターにとってのあるべき音色、音響とは何かを追求して出した答えとして、トーレスやハウザー1世のギターがあるのだと言います。2019年は独立してから30年を迎える年となりますが、その間常に現代の楽器についての研究も行ってきた製作家があえてスペイン的な伝統を変らぬ礎としているのは、何か大きな示唆を含んでいると言えるでしょう。すでに現代の名工と言ってもよい現代ドイツ屈指の製作家、達意のギターです。

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