HOMEエッセイguitarra-espanola > 禰寝碧海 第2話
禰寝碧海 第2話

禰寝碧海 ②(Guitarra Española ~受け継がれていく伝統~)

大学生の頃、まだ進路を決めていなかった私はなんとなくギターを修理することにハマっていた。
といっても小さいころから不器用で、修理について教えられていたわけでもないのでただ友達の壊れたエレキギターやアコースティックギターを音が出る状態にしたり、少しだけ改造などするだけの拙いものだったが小さい頃父の仕事場で遊んだ経験が少し繋がったように思い、このころからギター製作という職業にどんどん惹かれていった。

卒業後少しして父に弟子入りすることになる。一番初めの仕事はセラック塗装。しばらくの間ひたすらに塗装の練習をし、いよいよ一本目の製作に入るわけだがここでも基本的には父がマエストロから教わった通りに、父なりの改善も加えつつ修行は進んでいく。
四苦八苦しながらなんとか一本目を仕上げたが、小さい時から近くで見ていたはずの簡単な作業のひとつひとつにいくつも大切な要素が含まれていることを痛感すると共に材料や楽器の性質を考え、改善に改善を重ねてきた先人たちの連なりを感じた。

2012年の秋から冬にかけて、修行の為スペインへ渡る。

DSC01615

DSC01597

まだ暑さの残るグラナダに到着し、半ば興奮気味に暑さと疲れで引き攣った足も気にせず工房へ向かった。
坂道を上り工房の扉をあけると十年前と同じようにマエストロ アントニオ・マリンがいた。高校生の時の"おじいちゃん気分"とは違い師匠として向かい合っている事に、高校生当時にはない緊張感があったがマエストロは温かく迎えてくれた。
共に工房で仕事をしている甥のホセ・マリン・プラスエロ、ホセ・ゴンザレス・ロペス、そしてマエストロの孫であるフアン・アントニオ・マリンとも挨拶を交わし、そこで「ここで仕事をさせてください」と拙いスペイン語で伝え、グラナダでの修業が始また。

初めの一週間、邪魔だったとは思うがただひたすらに皆がしている仕事を観察した。マエストロの工房では頻繁に作り方が変わる。
その時々で良いと思う工夫を常に考え、それでいてとても合理的なものになっている。その為現在父の工房でしている工程と違う部分も多く、その度「これはなに?」と聞き、その発想に驚いてばかりいた。
そして道具の使い方、木の加工の仕方、すべてが手早く繊細でその格好良さに惚れ込むのに時間はかからなかった。

第1話←   →第3話

 


guitarra-espanola+guitarra-espanola+エッセイ+yomimono+