HOMEレポート > アウラ楽器特集「アルカンヘル、バルベロ・イーホ、カセレス ~スペインギターの神髄~」
アウラ楽器特集「アルカンヘル、バルベロ・イーホ、カセレス ~スペインギターの神髄~」

<アウラ楽器特集>

再発見 スペインギターの神髄 ~アルカンヘル、バルベロ・イーホ、マヌエル・カセレス~
Alcangel-Barbero hijo-Caceres

20世紀以降のスペインギター製作史における、その中でも最も高次での芸術的な達成が、とあるマドリッドの工房で、師弟関係にあった2人の非凡な製作家によってなされました。一人はアルカンヘル・フェルナンデス、そしてその弟子にあたるマルセロ・バルベロ・イーホ。

名工マルセロ・バルベロ1世との短いながらも決定的な邂逅を経て、マヌエル・ラミレスから続くスペインギター真正の伝統を継承したとされるアルカンヘル。彼を師とし、自らも個性的で充実した仕事を続けたバルベロ・イーホ。伝統と革新が奇跡的な化学反応を起こして融合したかのような2人の楽器は、数々の名手たちを惹きつけ、日本でも早くからファンを魅了してきました。

アルカンヘルが現在既に製作からしりぞき、バルベロ・イーホは61歳と言う「若さ」で鬼籍に入ってしまい、現在では2人の新作を入手することがもはや叶わなくなりました。

そんななか、若き日にホセ・ラミレス3世の工房で「MC」のスタンプを与えられて製作し、その後独立して製作をしながらアルカンヘル工房との深いつながりをもち、現在もマドリッドで精力的に新作を世に出している製作家がマヌエル・カセレスです。アルカンヘルの正統な直系とされ、そのニュアンスを多分に含みながらも独自の美学を追求し達成し続けてきたカセレスの楽器は、現代におけるマドリッド派の最上のもののひとつとされ、やはり日本でも人気の高いブランドとなっています。

ギターショップアウラではその創業から現在に至るまでこの希代の名工達と交流を深め、彼らが丹精込めて作り上げた素晴らしい楽器を日本に紹介してきました。
今回そのキャリアを通覧する充実したラインナップをご紹介。
全9本!ぜひこの機会をお見逃しなく!

 

 

出品楽器紹介
Arcangel Fernandez アルカンヘル・フェルナンデス(1931~)
フラメンコギタリストとしても類まれな才能を持っていた彼は、自分の耳と腕に適う良い楽器を探し求めるうち名工マルセロ・バルベロ1世の工房に足しげく通うようになり、やがてバルベロのすすめでギター製作に携わることになります。瞬く間に師の片腕になるほどまで腕を上げていきましたが、ほどなくして1956年にバルベロ1世が他界。アルカンヘルは僅か2年の間師と共に製作して学んだことをもとに独立、マドリードのヘスス・イ・マリア通りに工房を開きます。どんなに高名な依頼人であろうとも気に入らない仕事は受けず、自身の哲学を貫き、じっくりと時間を掛けて丁寧に仕上げられた彼の楽器はクラシックとフラメンコの両カテゴリーにおいて、マドリッドを代表するとともに、20世紀後半のスペインギター製作界における最高の成果の一つとされています。十分な粘りと素早い反応、真のアーティストの手によるものだけが持ちうる音楽的表現力の驚異的な深さと拡がり、見事と言うほかない造作など、名だたるギタリスト達が愛用し、いまも多くのギター愛好家たちの垂涎のマストアイテムとしてその名が筆頭に挙がる製作家のひとりです。

1959年 松・シープレス 660mm 
1965年 松・シープレス 655mm
1976年 杉・中南米ローズウッド 655mm

 

 

Marcelo Barbero hijo マルセロ・バルベロ・イーホ(1944~2005)
バルベロ1世の実子。当初ラミレス工房に修行に入り、徒弟時代はラミレスの新作ギターをアンドレス・セゴビアのところに試奏してもらうために持参するという「仕事」を任されていたこともありました。その後アルカンヘルの工房に弟子入りし、20代ですでに瞠目すべき楽器をいくつも作り上げています。実直な性格そのままに、年を経るごとにその完成度と独自性を増していったとされていますが、どの時期のものもやはりその非凡な才能を感じさせ、師の楽器と比肩しうるレベルのもの。人間的で温かみのある音色と、独特の「暗さ」とを表情として備えており、この両面性ゆえに西洋クラシック音楽との深い親和性を感じさせてくれる、まさに稀有なギターと言えるでしょう。

1987年 アルカンヘル工房ラベル 松・中南米ローズウッド 650mm

1988年 アルカンヘル工房ラベル 松・中南米ローズウッド 650mm 
1999年 アルカンヘル工房ラベル 松・中南米ローズウッド 650mm
2002年 アルカンヘル工房ラベル 松・中南米ローズウッド 650mm


Manuel Caceres マヌエル・カセレス(1947 ~)

1963年にホセ・ラミレス3世の工房に入り、当時の職工長であったパウリーノ・ベルナベのもと研鑽を積みながら、やがてMCのスタンプで製作を許されるほどになります。当時のラミレス最上位モデルである1A のMCスタンプ は現在も中古市場で人気の楽器となっています。1978年にラミレス工房を出た後に独立し、同時期よりアルカンヘル・フェルナンデスとの共同作業的な親交が始まります。これがカセレスのギター製作に大きな影響を与えることになり、アルカンヘルが引退した現在ではその唯一直系の製作家として人気を博しています。

1995年 アルカンヘル工房ラベル 松・中南米ローズウッド 650mm

2015年 アウラオリジナル アルカンヘルモデル新作 松・中j南米ローズウッド 650mm

IMG-20160713-WA0049

Arcangel Fernandez (right) and Manuel Caceres(left)

 

 

アルカン、マルセロ94-1Arcangel Fernandez (right) and Marcelo Barbero hijo (left)


レポート+report+++