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6.ベルンド・マルティン

A:ベルンド・マルティンはすでに若手というよりも中堅ですが、次世代を担う人として取上げたいと思います。2000年のセヴィリアの製作コンクールで優勝しましたね。

B:あのコンクールは、かなり厳密に行われ、ヘッドで見分けがつかないように覆い、ラベルも上から紙を貼って隠して工作精度を点検したり、音の評価をカーテン越しに行ったりしたそうです。審査員として参加したロマニリョスもこの点を高く評価していました。

C:この20年ほどの間に、世界的にスペインギターの伝統的な音作りが失われてきています。 それはギターの国際化という前向きな見方もできるわけですが、トーレスからマヌエル・ラミレス、サントス、バルベロI世、アルカンヘルと、スペインの製作家が長い時間をかけて育ててきた職人の技が、本家のスペインでも失われつつあるという問題を生んでいます。そうした中で、マルティンが受賞するというのは重要な意味があると思います。

A:それはどういう意味ですか?

C:若手でそのあたりを意識している製作家はスペインでも減ってきていて、逆にマルティンやオルディゲスなどの非スペイン人製作家がスペインの伝統技法や音作りを守ろうと積極的です。

B:彼らは、楽器研究家として又トーレスのレオナの所有者として有名なドイツ人医師と一緒に研究しているし、マルティンはトーレスやサントスで演奏しているリースケと親友ですしね。地味な存在ですが、貴重です。

C:尾野さんが参加したロマニリョスの講習会も、「一度失われたら、もう戻すことはできない」というスペインの伝統技法への強い危機感から開催されています。伝統工法の一番の問題は、手間がかかり製作本数が多く出来ないのに、それを価格に反映させる事が難しいという点です。それを嫌って後継者が育たない現実に対して、講習会という方法で国籍を問わず有能な人材を育てようとしてしているのです。

A:音の特徴はどの辺にありますか?

C:初期のラベルはバルベロ1世にそっくりな事でも分かる通り、かなりバルベロやサントスを意識した作りで、スペイン的な香りが感じられる音色です。それ以降のの作品も、幾分細めですが繊細な音色のなかに野太さも加わり、長い時間をかけてじっくり弾きこむのが楽しい楽器と言えるのではないですか。

B:マルティンは長くグラナダで製作していて、ドイツ人製作家というイメージではありませんね。

D:彼はマリンの弟子なの?

B:そうです、マリンだけで無く多くのグラナダ在住の製作家と親交があり、グラナダへ来た当時いろいろな指導を受けたりしています。

D:マリンの音とはずいぶん違う感じがしますが。

C:技術的な面では、もちろんマリンからたくさん吸収していますが、マルティン自身の音のイメージは、マリンよりもサントスやバルベロあたりを目指していると言えると思います。リースケは次回のCDをマルティンのギターでリリースする予定とも聞いていますのでそれも楽しみです。


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