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髙木真介のスペイン便り
26.サラマンカ春の現代音楽祭,クエンカ宗教音楽週(2003.4.12)

皆様こんにちは。すっかりご無沙汰をしておりますが,お元気ですか。こちらスペインでもすっかり春らしい陽気です。さてさて,本当に久しぶりのスペインだよりです。今回のスペインだよりは,先ず,サラマンカで行なわれた春の現代音楽祭に関してお伝えします。サラマンカはスペイン最古の大学があることで知られています。カスティーリャ地方を代表する古い美しい街並と,そこを行き交う若い学生たちの活気とが不思議に調和した街です。サラマンカ大学と地元の信用金庫CAJA DUEROの主催で毎年行なわれている,この現代音楽祭は今年で12回目になります。合計7回のコンサートがCAJA DUEROの音楽ホールで開かれ,とてもバラエティーに富んだ興味深いプログラムが組まれていました。

サラマンカ 第12回春の現代音楽祭

3月31日 : TRIO MISTONGO

ギター,ピアノ,バンドネオンの3人のアルゼンチン人ミュージシャンによるタンゴ・トリオ。をはじめオリジナル作品を中心にピアッツォーラも含む,アルゼンチン・タンゴのプログラム。

4月1日 : TRIO ARBOS

スペインで活躍するバイオリン,チェロ,ピアノからなるトリオ。G.ゴンバウなどスペイン現代作曲家の作品を演奏。L.ブローエルの作品もプログラムに含まれる。

4月2日 : ENSEMBLE UCIMEC

バイオリン,チェロ,ピアノ,フルート,ギターそしてソプラノからなる編成のグループ。F.オテロ,J.M.ガルシア・ラボルダなどのスペイン現代作曲家の作品。エレクトロ・アコースティックとの融合の作品も含まれる。

4月3日 : BIG BAND DE LA UNIVERSIDAD

サラマンカ大学音楽学部の有志によるジャズ・バンド。

4月4日 : DUO DE VIOLONNCELLO y PIANO

A.グティエレス(チェロ)とL.F.ペレス(ピアノ)の若手デュオ。ピアッツォーラのグラン・タンゴのほか,ラフマニノフのソナタなどを演奏。

4月7日 : TRIO CONTRASTES

M.A.パストール(バイオリン),L.ディアス(クラリネット),L.M.アベーリョ(ピアノ)という少し変則的なトリオ。3人ともまだ若いミュージシャンたち。ストラビンスキーの組曲「兵士の物語」や,S.ブロトンの”SIMETRIES”などの曲目を演奏。

4月8日 : GRUPO NEOPERCUSION

打楽器のグループ。武満徹の”SESONS”やタイラヨシヒサ(スミマセン,漢字を知りません)の”HIEROPHONIE V”といった日本の作曲家の作品を含むプログラム。

私事ですが,4月2日のENSEMBLE UCIMECのコンサートにギター担当で私も出演しました。我々のプログラムの全作品は,バスク地方出身の詩人たちの詩に基づいて作曲され,昨年10月パンプローナのナバーラ大学主催「ヨーロピアン文化会議」で初演されたものです。すでに録音もされていてCDとして発売される予定です。

演奏したホールは500人ぐらいのキャパシティーで,とても美しい,音響の良いホールでした。当日は8割ほど客席が埋まり,若い人たちが現代音楽に興味を持っているようで,とても嬉しく思いました。

次の話題は,イースターにちなんだ音楽祭についてです。今年で42回目になる宗教音楽週間は,クエンカでイースターのときに毎年開催されています。以前「スペインだより,その10」でこの音楽祭についてご紹介しましたが,クエンカの街などにも触れていますのでご参照ください。例年に劣らず今年の出演者もそうそうたるメンバーが集まっています。古楽好きの方には特にとても興味深いと思います。

第42回クエンカ宗教音楽週間

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4月11日 クエンカ音楽堂(Auditorio de Cuenca)

The Sixteen 指揮H.Christophers

4月12日 アルカス教会(Iglesia de Arcas)

Ensemble Plus Ultra 指揮M.Noone

4月12日 クエンカ音楽堂(Auditorio de Cuenca)

Orquesta Ciudad de Granada 指揮J.L.Cobos

 

4月13日 クエンカ音楽堂(Auditorio de Cuenca)

D.Ranki(ピアノ),E. Kluton(ピアノ)

4月14日 サン・フェリーペ・ネリ教会(Iglesia de San Felipe Neri)

Orphenica Lyra 指揮J. M. Moreno

4月14日 サン・ミゲール教会(Iglesia de San Miguel)

Gabrieli Consort指揮P. McCreesh

4月15日 サン・ミゲール教会(Iglesia de San Miguel)

Cuarteto Casals

4月15日 クエンカ音楽堂(Auditorio de Cuenca)

E. Urbanova(ソプラノ),J. Pokorny(ピアノ)

4月16日 アントニオ・ペレス財団(Fundacion Antonio Perez)

G. Leonhardt(チェンバロ)

4月16日 クエンカ音楽堂(Auditorio de Cuenca)

The King’s Consort 指揮R. King

4月17日 サン・ミゲール教会(Iglesia de San Miguel)

La Risonanza : O.Centurioni(バロック・バイオリン) F.Pavan(テオルバ)

F.Bonizzoni(オルガン・指揮)

4月17日 クエンカ大聖堂(Catedral de Cuenca)

Schola Antiqua 指揮J.C.Asensio

4月17日 クエンカ音楽堂(Auditorio de Cuenca)

Amsterdam Baroque Orchestra指揮T.Koopman

4月18日 サン・ミゲール教会(Iglesia de San Miguel)

La Risonanza : D.Plantier(バロック・バイオリン) F.Pavan(テオルバ)

F.Bonizzoni(オルガン・指揮)

4月18日 クエンカ大聖堂(Catedral de Cuenca)

Schola Antiqua 指揮J.C.Asensio

4月18日 クエンカ音楽堂(Auditorio de Cuenca)

Concerto Italiano指揮R.Alessandrini

4月19日 サン・ミゲール教会(Iglesia de San Miguel)

La Risonanza : R.Minasi(バロック・バイオリン) F.Pavan(テオルバ)

C.Dell’Angello(バロック・チェロ) F.Bonizzoni(オルガン・指揮)

4月19日 クエンカ大聖堂(Catedral de Cuenca)

Schola Antiqua 指揮J.C.Asensio

4月19日 クエンカ音楽堂(Auditorio de Cuenca)

Joven Orquesta Nacional de España指揮A.Zedda

4月20日 クエンカ大聖堂(Catedral de Cuenca)

Schola Antiqua 指揮J.C.Asensio

4月20日 クエンカ音楽堂(Auditorio de Cuenca)

Europa Galante指揮F.Biondi

個人的には,14日のホセ・ミゲール・モレーノ(ビウエラ,リュート,19世紀ギターなどの名手)が率いる古楽アンサンブルOrphenica Lyraや,16日のグスタフ・レオンハルトのチェンバロ・リサイタル,同日のキングス・コンソート(ビバルディのオラトリオ演奏),そして17日のトム・クープマン指揮のアムステルダム・バロック・オーケストラ(バッハのヨハネ受難曲を演奏)などの演奏を聞いてみたいなと思っています。これらのコンサートのうちいくつかは,スペイン国内では,RNE(スペイン国営放送)のFMラジオ・クラシカで生放送されます。

演奏曲目など詳しい内容は以下のウェッブサイトまでどうぞ。

www.semanademusicareligiosa.com/home.html

聖週間には,不思議な雰囲気のクエンカの街並を楽しんだり,イースターの行列を見たりしながら,宗教音楽や古楽を堪能することをお勧めします。悲惨な戦争などの不穏な世界情勢を一時忘れて,気分がリフレッシュされるかもしれませんね。

これで今回のスペインだよりはおしまいです。醜い争い事のない平和な世界がいつか来るようにいつも祈っています。どうか皆様お元気で。

高木真介,2003年4月11日,マドリード

Masayuki Takagi


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